プロボクシング元世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(45=米国)が9月に、RIZINファイターの朝倉未来(29=トライフォース赤坂)とエキシビションマッチで対戦する。RIZIN榊原信行CEO(58)が米国で13日に会見を開いて発表した。

日本でのエキシビションマッチは、18年大みそかのRIZINで那須川天心と対戦以来となる。当時の日刊スポーツの記事を、復刻版でお届けする。

 

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<RIZIN14>◇2018年12月31日◇さいたまスーパーアリーナ◇観衆2万9105人

 

ボクシングの元世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(41=米国)が本気になった。ボクシング・エキシビションマッチで、キックボクシング界の“神童”那須川天心(20)から3度のダウンを奪い、1回2分19秒、TKO勝ちを収めた。那須川のパンチが左ほおをかすめた瞬間、本気モードに突入。33連勝の那須川を子ども扱いし、格の違いを見せつけた。

 

試合開始のゴングが鳴ると、メイウェザーは笑いながら戦い始めた。最初の打ち合いで、那須川の左ストレートがほおをかすめると、顔つきが変わった。右ボディーの後、右フックを那須川の側頭部にたたきこみ、1度目のダウン。さらに、右アッパーで2回目。そして左フックでとどめをさした。

 

日本マット界に、世界トップの大物が上がり、日本人選手と対戦するのは、ムハマド・アリ対アントニオ猪木戦以来の“歴史的事件”だった。エキシビションながら、容赦なく襲いかかり15発で那須川を沈めた。那須川のパンチも当たったが、次元が違った。

 

試合後はまた、へらへら笑いに戻った。予定になかった会見を開き、上機嫌で15分間話し続けた。「那須川は若いライオンだ。成長する余地はたくさんある。この試合は記録には残らない。これからも頑張ってほしい」と惨敗した相手を持ち上げた。

 

世紀の一戦とも言われた戦いは、公式戦でないにもかかわらず、ルール問題で試合当日までもめた。最後は、RIZIN側の説得を受け入れ、メイウェザーが「ハンディ」として10オンス、那須川が8オンスのグローブを着けることを承諾。今回の来日で、初めてメイウェザーが折れた。それでも会場に遅れてくると、いったん巻いた那須川のバンデージをもう1度巻き直させるなど、ぎりぎりまでやりたい放題だった。

 

那須川も、試合が決まるとボクシングの本格トレーニングのため渡米。メイウェザーと同じラスベガスの元3階級制覇王者ホルヘ・リナレスのジムで特訓した。それでも子どもの頃から那須川を見ているテッペンジムの那須川弘幸会長は「本当は怖くてたまらないんですよ。メイウェザーが本気になったら、天心が壊されるかもしれないじゃないですか」と、試合前に苦しい胸の内を明かした。その心配が当たった形だ。

 

メイウェザーは試合の後の会見を終えると、米ラスベガスへ帰るために羽田空港へ直行した。嵐のようにRIZINを席巻したメイウェザーは、そのニックネーム「マネー」の言葉通り、わずか50時間あまりで約10億円のファイトマネーを稼ぎ出した。