初挑戦の重岡銀次朗(23=ワタナベ)は、気の毒としか言いようがない。頭を突き出したのは王者の方だ。アゴに頭突きを食らった重岡の方が痛かったはず。なのに王者は大げさに痛がり、泣いて試合続行をいやがった。深い傷を負ったわけでも、目が腫れていたわけでもない。棄権による重岡のTKO勝ちでいいのではないか。
ボクシングにバッティングはつきもの。故意はいけないが、激しく打ち合えば頭もバチバチと当たる。自分も現役時代に前が見えなくなるほど顔面が腫れた経験があるが、ボクシングをやっていれば当たり前のこと。世界王者がバッティングくらいでやめていては、試合にならない。
相手が強く、分が悪くなれば、序盤に頭が当たった時に「もうダメだ」と主張して無判定試合に持ち込む。今後そんな選手が出てくる可能性もある。レフェリーとドクターが続行可能と判断すれば、再開に応じない選手をTKO負けにできるようなルールを早急につくる必要がある。
谷口将隆(28=ワタナベ)のKO負けは魔が差したとしか言いようがない。実力的には数段上で、ウィービングやダッキングでパンチをかわして成長も感じさせたが、ほんの一瞬の油断で右ストレートをまともに食らってしまった。あらためてボクシングの怖さを思い知らされた。
(元WBA、WBC世界ミニマム級王者)