WBC世界ミニマム級3位重岡優大(26=ワタナベ)が世界初挑戦で世界王座奪取に成功した。

同級7位の元WBO世界同級王者ウィルフレド・メンデス(26=プエルトリコ)とのWBC同級暫定王座決定戦に鮮やかな7回KO勝ち。先の試合で弟の重岡銀次朗(23=ワタナベ)がIBF世界ミニマム級暫定王座決定戦に勝利しており、国内初の「兄弟同時世界王座獲得」という偉業を達成した。

まず銀次朗が世界をつかんだ。 同級3位で元同王者レネ・マーク・クアルト(26=フィリピン)の強打に序盤こそ苦しんだが、次第にペースを握ると6回、7回と強烈な左ボディーフックでダウンを奪う。そして9回にも再び左フック2発で倒し、見事にKOで勝利した。

銀次朗の勝利に優大は刺激を受けた。その弟がセコンドに付く中、序盤から足を使って優位に試合を進めた。そして5回、チャンスと見るや果敢に連打を繰り出し、左ストレートでメンデスから最初のダウンを奪った。そして7回、コーナーに追い詰めると左ボディーを打ち込んだ。相手はひざまずきダウン。危なげない戦いで勝利をたぐり寄せた。

当初、挑戦予定だった正規王者パンヤ・プラダブスリ(タイ)がインフルエンザ感染で来日不可能となり、約1週間前にメンデスとの暫定王座決定戦に切り替わっていた。急きょ対戦相手がサウスポーに切り替わったが、確実に世界ベルトを手にした。

幼少から2歳下の弟銀次朗と空手道場に通った重岡は小学校6年から並行してボクシングを始めた。父功生さんの独学によるスパルタ指導でトレーニングを積んだ。柱を殴って拳を強化し、自宅車庫にサンドバッグを吊し、父の持つミットを打ってボクシングに励んだ。「おやじは格闘技の経験ないですが、亀田兄弟の本が家にあって参考にして亀田家みたいな練習でしたね。でも素人だからこそ(丁寧な指導で)うまかった部分があったのではないか」。中学1年までは週3回は空手、残りの4日はボクシングジムや父の指導を受け、遊ぶ暇は与えられなかった。夕飯の時間は夜9時近く。「寝るのも遅くなるし。飯食った後、腹筋とかVTR見ろとか格闘技漬け。寝るのも遅くなるし。だから俺らは体が小さい」。

熊本・開新高では高校4冠、名門・拓大進学後も18年の全日本選手権を制覇してアマ5冠となった。3年まで通った大学を中退し、19年10月にプロデビュー。日本ユース王座(ライトフライ級)、WBOアジア・パシフィック王座、日本王座(ともにミニマム級)を獲得し、プロ7戦目で世界挑戦にたどり着いていた。

熊本市出身。4月16日には熊本地震の本震があった一方、優大のバースデーでもあった。「今年ぐらい俺たちで熊本に良いニュースを届けたい」と世界初挑戦のリングに立っていた。26歳の誕生日に「通過点ではあるが、ずっとボクシングを続けてきたこれまでの集大成」と表現していた世界王座を獲得。重岡兄の新たな世界ロードがこれから始まる。

★重岡銀次朗(しげおか・ぎんじろう)アラカルト★ 

◆生まれ、家族構成 1999年(平11)10月18日、熊本市生まれ。父功生さん、母加寿美さん、姉真梨乃さん、ボクサーの兄優大、妹日奈子さん

◆競技歴 幼稚園から小学6年まで空手。小学4年から並行してボクシングを開始。小学5年からU-15(15歳以下)全国大会で5連覇。

◆高校5冠 熊本・開新高で16、17年高校選抜連覇、16年国体優勝など5冠を獲得。アマ戦績は56勝(17KO・RSC)1敗。

◆プロで日本王座、アジア王座獲得 18年9月にプロデビューし、プロ4戦目でWBOアジア・パシフィック・ミニマム級王座を獲得(2度防衛後に返上)。昨年3月には日本同級王座も獲得。

◆スタイル 身長153センチの左ボクサーファイター。

 

★重岡優大(しげおか・ゆうだい)アラカルト★

◆生まれ、家族構成 1997年(平9)4月16日、熊本市生まれ。父功生さん、母加寿美さん、姉真梨乃さん、ボクサーの弟銀次朗、妹日奈子さん

◆格闘技歴 幼稚園から空手道場に通い、小学6年からボクシングを始める。2年間は空手とボクシングを並行して習う。中学2年からボクシング専念。

◆アマ5冠 熊本・開新高で高校4冠を獲得。名門の拓大進学後、18年に全日本選手権ライトフライ級を制した。アマ戦績は81勝10敗。大学3年で中退し、ワタナベジムに入門。

◆プロ王座 19年10月に2回TKO勝ちでデビュー。21年2月、日本ライトフライ級ユース王座を獲得。同11月、WBOアジア・パシフィック・ミニマム級王座を奪取し、1度防衛、22年11月、日本同級王座を獲得。

◆スタイル 身長160センチの左ボクサーファイター。

 

◆ビデオ判定 IBF世界戦で初のビデオ判定機能「ビデオ・テスティング・システム(VTS)」が採用された。08年からWBCが採用するビデオ判定(インスタントリプレー)の方法をベースに、日本ボクシングコミッションがABEMAの協力を得てバージョンアップ。別角度にカメラ5台が設置され、レフェリーの要請があった場合、パネリスト(委員)3人が映像チェックする。全員が同判断の場合のみ、判定変更される。この日のクアルト-重岡銀戦の6回には、1度は重岡銀がクアルトからダウンを奪ったとジャッジされたが、レフェリーのVTS要請によってスリップに変更された。