プロボクシングWBA世界フライ級王者アルテム・ダラキアン(36=ウクライナ)がロシアの侵攻で苦しむ母国、友人、家族の思いを背負い、7度目の防衛戦に臨む。
23日にエディオンアリーナ大阪で行われる同級1位ユーリ阿久井政悟(28=倉敷守安)とのV7戦に向け15日、東京・新宿区の帝拳ジムで練習を公開した。22勝(15KO)の無敗王者は「ウクライナには勝利が必要なんだ。日常でも、スポーツでも、『勝利』が必要。家族のためにも頑張りたい。最後まで戦う」と強い覚悟と決意を示した。
22年2月からロシアによるウクライナ侵攻を受けながら、ダラキアンはキーウを拠点に練習を続ける。ユーリ阿久井戦に向けたスパーリング中には、空襲警報のサイレンにメキシコ人練習パートナーが動揺。ダラキアンは「びびる彼をなだめて防空壕(ごう)に行ったんだ。市外では銃撃や爆発があるので厳しい状況。やはりスパーリング相手を探すのが難しかった」と明かした。戦闘用ドローンやミサイルが飛ぶ中で必死にトレーニングを続けてきたと強調した。
元軍人のダラキアン自身の家族らには被害がなかったものの「知人は亡くなり、友人は最前線で戦っている。家が燃え、避難しても帰宅できる家がない人もいる」と発言。ダラキアンと契約するユニバースプロモーションのユーリ・ルーバン代表は「ウクライナのボクサーは28人が亡くなった」と明かした。
ダラキアンは「私の決意は変わっていない。こういう状況だからこそ、基本に立ち返りたい。一番強いものが勝つ。本物の王者がベルトを持つ、それだけ。オリンピックの精神と同じだ」と自信を示した。挑戦者となるユーリ阿久井について「とても良いボクサー。私はどの選手でも敬意を持っているが、彼は良い人、良い選手の印象がある」としつつも、迎え撃つ準備は整えている。「挑戦者は全力で向かってくる。それをはね返す、しのぐ力がないといけないと練習してきた。ベルトは私が持って帰ると思っている。強いものが勝つ」と自信の笑みを浮かべた。
夫人と4人の子供(3女1男)は母国から応援するという。ユーリ阿久井の挑戦を受ける23日は母マリーナさんの58歳のバースデーでもあり「母親のためにベルトを持ち帰られないといけない」と誓った。ロシア侵攻の影響で、来日時にはキーウからポーランドまで18時間かけてバス移動。ポーランド・ワルシャワから空路で来日した。移動だけで2日間以上かかっている。それでも「計画通りにコンディション作り、調整できている。少しだけ減量の問題があるが、ほぼ計画通り。時差ぼけも解消しつつある。夜も眠れている」と平然と言った。無敗王者は心身ともに強さを示している。

