WBO世界スーパーフライ級王座決定戦は同級1位の田中恒成(28=畑中)が、大差判定勝ちで、史上最速の21戦目、日本選手3人目の4階級制覇を成し遂げた。同級2位クリスチャン・バカセグア(26=メキシコ)から8回にダウンを奪うなど圧倒。今後は唯一の黒星を喫したWBA同級王者井岡一翔(志成)もターゲットに、4団体ベルト統一を目標に掲げた。WBC世界バンタム級タイトル戦は挑戦者の同級1位中谷潤人(26=M・T)が6回TKOで3階級制覇を達成。WBA世界バンタム級王者井上拓真(28=大橋)はKOで初防衛に成功した。

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井上はこれまでになく積極的で強気だった。アンカハスは1階級下で9度防衛した元スーパー王者。怖い相手だからこそ、気合が入っていたのだろう。これまでは下がってしまうこともあったが、今回は打ち合いでも前に出て応戦した。だから生きた強いパンチを打ち込むことができた。

相手のジャブに合わせて右カウンターを決めたことで、アンカハスは接近戦を挑んできたが、井上は近距離でもウィービングやダッキングで空間をうまく使ってパンチを決めていた。アンカハスという強敵が井上を成長させたのだと思う。この勝利を機に、さらに強くなりそうだ。

中谷潤人は王者に何もさせずに試合を終わらせた。彼は172センチの長身を生かして長い距離でも戦えて、さらに打ち合いも得意。右アッパーや左フックも強烈で多彩だが、この試合は長い距離からの左ストレートだけで決めた。この階級でも体は大きいし、パンチ力もある。未知の強さを感じる。

田中恒成は接近戦の打ち合いも、終始落ち着いていた。相手のパンチを冷静に見極めて、印象のいいパンチを当てていた。近距離であれだけパンチを見られるのはすごいこと。もともとスピードとパンチの回転力が持ち味。加えて今回はそのパンチを的確に当てていた。そこに成長を感じた。

本人が希望している統一戦に勝って、もう1度井岡と戦ってほしい。実現すれば日本ボクシング界もさらに盛り上がるはずだ。(元WBC世界スーパーフライ級王者)