獄中からはい上がってきた男が夢の世界挑戦に王手をかけた。かつて「天才ボクサー」と期待されながら2度の収監、計11年も刑務所で暮らしたWBO世界バンタム級11位の健文トーレス(36=TMK)が、WBO世界スーパーフライ級1位で東洋太平洋同級王者KJ・カタラジャ(29=フィリピン)に判定勝ち。前回もバンタム級の世界1位に1回TKO勝ちと連続の金星に、プロモーターの亀田興毅氏(37)は世界挑戦のチャンス作りを明言した。
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しびれる死闘を制した男は紫色に腫れた目で天井を見上げた。トーレスは「正直、気持ちは倒しにいった。でもファイターになるとリスクが高い。僕には後がない。1回でも負けたらすべてが消える。絶対に負けてはいけない…生き残った」。判定2-1の辛勝、結果がすべてだった。
約8年ぶりに立つ日本のリングだった。JBCからのライセンスを得られず、フィリピンに拠点を置いて戦った。今年5月、「最後は華々しく散ってやろう」とWBO世界バンタム級1位レイマート・ガバリョ(フィリピン)と対戦し、1回TKO勝ちで未来が開けた。世界1位連破は、さらに進む道を広げた。
波瀾(はらん)万丈の人生。世界王者の父、「天才ボクサー」と期待されながらタクシー強盗など2度の収監。6年半+4年半、計11年も刑務所にいた。その経験がこの日は生きた。「『無理と思ったら押し通すな』は刑務所で学んだ」。強打のカタラジャを最後までコントロールした。
世界ランク上位は確実。プロモートする興毅氏は「彼には先がない。もちろんチャンスを作りにいく」と次戦に世界挑戦への道筋を明言した。トーレスは「4回戦だろうが世界戦だろうが俺はリングに立ちたい。与えられたチャンスを食いにいく」。11年の獄中生活から世界王者へ。夢物語の扉は開けた。【実藤健一】
◆健文(けんぶん)トーレス 本名トーレス・マルティネス・健文。1987年10月5日生まれ、出生地はメキシコで本籍は大阪市平野区。父は元WBC世界ライトフライ級王者ヘルマン・トーレス。04年12月のデビュー時から「天才ボクサー」と期待され、世界ランク上位につけるもタクシー強盗などで2度、計11年の収監。昨年に介護士の資格を得て施設で働きながらフィリピンでボクシングを再開。今年、TMKジムに所属しJBCからライセンスを再交付された。身長168センチの右ボクサーファイター。戦績は15勝(10KO)5敗。
○…WBO世界スーパーフライ級王者・田中恒成の畑中清詞会長が、視察に訪れた。お目当ては同級1位カタラジャだったが、まさかの判定負け。「こんなことあるんだね。びっくりした」。田中は10月14日に防衛戦に臨むが今後、トーレスが挑戦者として浮上の可能性もある。しかし、畑中会長は「あほな話しないでよ。そんなもんマンガだ、マンガ」と一蹴した。

