プロボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(33=大橋)が今日2日、東京ドームでWBA、WBC、WBO世界同級1位中谷潤人(28=M・T)との防衛戦に臨む。3月6日の日刊スポーツ創刊80周年企画で井上は、日刊スポーツで評論家を務める所属ジムの大橋秀行会長(61)と師弟初対談に臨んでいた。「世紀の一戦」とも言われるビッグマッチに向け、両者の対談の完全版を3回にわたって掲載。最終回は、愛称「モンスター」や2人の未来を語った。【取材、構成=藤中栄二、首藤正徳、田口潤】

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◆世界に愛称「モンスター」が定着

大橋会長 強いヤツとしかやらない。それはうちのジムに入る時の約束事だった。自分も現役時代に「強いヤツとしかやらない」と言われていたのだけれど…。それは自分では言っていなかったが、勝手にそうなっちゃっていたな(笑い)。尚弥がプロ転向した時、愛称は怪物ですと。怪物を米国に連れていってモンスターに変えてみせると言って。最初、モンスターの愛称を嫌がっていたよね。

井上 モンスターはちょっとな…と。

大橋会長 リングアナウンサーのコールでモンスターをやめてほしいと言っていたぐらいだった(笑い)。でも試合内容で見せ、モンスターになったよね。

井上 今は海外では自分の名前よりも先にモンスターが出ますよね。

◆2人の未来

井上 (引退への考え方は)ここ最近で変わってきて。年齢じゃないなと。練習に対しての姿勢とか取り組み方が変わってきたら、辞め時かなと思っている。パフォーマンスではなくて気持ち。今は気持ちが「強くなりたい」というものがあるので、まだ続けられる。(昨年12月の)サウジアラビアの(アラン・)ピカソ(メキシコ)戦も(相手の)実力的にはモチベーションは上がるのは難しかったけれど、トップでやっている練習量まで上げることができた。なので全然、いけるなと思っていた。でも「このぐらいでいいや」とか、100%やっていた練習を70%に落として挑んでいたら、少し考え方も変わっていくと思います。

大橋会長 気持ちが入ってなく、ただリングに立つだけではダメだと思う。いかに気持ちを入れて練習するかが大事。

井上 年齢とともに落ちていくところはあるんですよ。そこを理解することが大事で。それを受け入れながら、どうボクシングと向き合っていけるか。それによってトレーニング内容も変わってくる。例えば反射的なものを入れていくとか。

大橋会長 野球じゃないけど、今の尚弥は直球だけでなくコースをついた変化球の勝負もやっている。そういうところは見ていて感じるよ。

井上 例えば「ザ・キング」(新人の藤木勇我)とマスボクシング(軽めのスパーリング)をやるとして、今はまだ反応の面は大丈夫ですけど、あと2年、3年となったら、やっぱり絶対、人の体として厳しくなってくる。それは当たり前なので。速いですし、あれは若さかなと(笑い)。

大橋会長 今の尚弥は若さをカバーする技術があると感じるよ。普通は衰えを認めないで、ただ「俺はまだまだやれる」とやっていって、だんだんとダメになってしまうもの。そこで違う技術を使って戦うのはいくらでもできると思う。衰えを認めるのは嫌じゃない?

井上 はい、認めるのは嫌ですね。でも、それは当たり前のこと。どう理解して戦うかなんですよね。

大橋会長 そうそう、気持ちだよね。自分は(現役引退した時)WBA、WBCと両方で世界王者になって満足して。あの時が27歳だからね。あの当時の27歳は現役としては「長老」にみたいに思われていた時代だからね。今は僕の時と10歳は違っていると思う。それが食べ物、サプリメント、トレーニングですごく差が出ている。今の尚弥を見ていると、常に気持ちが入っていてスパーリングを見ていても、まだまだこれから全盛期という反応がみえる。まだまだこれからなのかなと思う。(おわり)

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