自衛隊小銃部隊の元隊員が、世界タイトルに挑む。WBC世界ライトフライ級12位の角谷淳志(28=金沢)が、同級王者のアドリアン・エルナンデス(27)と、8月10日に敵地メキシコシティで初のタイトルマッチを戦うことが決まった。11日、所属する金沢ジムで会見した角谷は千載一遇のビッグチャンスに「正直ビックリ。不利なのは承知の上ですけど、やるからには勝ちたい。判定では難しいのでKOを狙う」と言い切った。

 異色の経歴の持ち主だ。1学年40人足らずの兵庫・篠山産業高校東雲分校で学び、卒業後に陸上自衛隊へ。小銃部隊に配属され、ライフル銃を持って射撃訓練にいそしんだ。格闘部隊にも所属し、顔面攻撃や関節技もある環境下で、精神面とパンチ力を磨いた。本格的にボクシングを始めるために2年で自衛隊を離れ、28歳にしてようやく世界への扉に手を掛けた。

 今後は同じライトフライ級で、WBA王者の井岡一翔(24)の胸を借りる。金沢会長は「井岡ジムに行ってスパーリングをする話もある」と説明。角谷が世界王者に立てば、井岡と夢の統一戦も現実的になる。かつて世界王者徳山を育てた同会長は「パンチ力は徳山より、角谷の方が上」と期待。遅咲きのボクサーが夢をかなえる。【益子浩一】

 ◆角谷淳志(かくたに・あつし)1985年(昭60)4月23日、兵庫県篠山市生まれ。篠山小時代に少林寺拳法を習い、篠山産業高校東雲分校に進学後ボクシングと出会う。卒業後は陸上自衛隊伊丹駐屯地に勤務。21歳で本格的にボクシングを始め、08年プロテスト合格。10年の全日本新人王。戦績は13勝(6KO)1分け3敗。169センチ、右ボクサーファイター。