西前頭12枚目の正代(しょうだい、24=時津風)が「新入幕対決」を制して3勝目を挙げた。東前頭16枚目の輝(21)を寄り切りで下した。元横綱輪島を遠縁に持つ輝に対し、正代は歌手の石川さゆりが親戚だったことが判明。有名人と縁がある日本人若手ホープ同士の“珍取組”を制し、目標の勝ち越しへ弾みをつけた。

 心の高ぶりを、力に変えた。輝との初対決を前に、正代の鼓動は花道から速まった。「いつもより緊張するのが早かった。負けたら星が同じになるし、同じ新入幕だったら勝っていたいですから」。気合十分に立って、相手の突っ張りを受け止めると、右を差して寄り切った。「自分の相撲を取れた」。3歳年下の21歳を力でねじ伏せ、笑みがこぼれた。

 輝は元横綱輪島を遠縁に持ち、身長193センチと恵まれた体格で将来を期待される。だが、東農大2年で学生横綱になり所要11場所で入幕した正代の家系にも、有名人がいた。この日の朝稽古後に「母方の祖母の兄の奥さんの妹の娘が、石川さゆりさんなんです。会ったことはないんですけど、祖母の兄が亡くなった時に(石川から)大きな花が届いてました」と仰天告白。大物歌手と、親戚だったことを打ち明けた。

 すかさず、師匠の時津風親方(元前頭時津海)に「そういえばカラオケで『津軽海峡・冬景色』を歌ってたな」と突っ込まれると「えっ? 歌ってないですよ」と苦笑い。美声力士が多い角界にあって、正代は歌が大の苦手。「石川さんとは親戚だけど、血縁はないですから」と照れた後「才能は歌じゃなく、土俵で全部出してます」とニヤリ。その言葉通り、日本人若手ホープ初対決を制した。

 珍しい「正代」という名字の先祖は海賊だったという説もあるが、平成の正代は温厚な性格だ。昨年九州場所の十両優勝で得た賞金(手取り120万円)は全額、熊本の両親にプレゼントした。今場所は、悪性リンパ腫で闘病中の兄弟子時天空を、自らの勝利で元気づけたい思いもある。「あと5番、勝たないと」。新入幕の目標は、まずは勝ち越し。うれしい3勝目にも、まだ浮かれることはない。【木村有三】

 ◆正代直也(しょうだい・なおや)本名同じ。1991年(平3)11月5日、熊本県宇土市生まれ。小1で相撲を始める。熊本農高3年時に国体優勝。東農大2年時に学生横綱に輝き、3年時は全日本相撲選手権決勝で遠藤に敗れて2位。14年春場所初土俵。15年秋新十両、同九州で十両優勝。183センチ、159キロ。家族は両親と姉、弟。得意は右四つ、寄り。血液型A。