九重親方(享年61=元横綱千代の富士、本名・秋元貢)の急逝から一夜明けた8月1日、同じ九重部屋で育ち、弟弟子だった八角理事長(元横綱北勝海)が取材に応じて思い出を語った。

 前日7月31日は「あまりにもショックで、コメントのしようがない」というコメントを、春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)を通じて出した。言葉にならなかったのは「(頭が)整理できなかった」という。「(体調が)悪いとは聞いていたが、現役のころから絶対に強い、絶対に負けないと、そういう目で見ていたので、治るだろうという思いでいました。(訃報を聞いて)本当なのかと。『えっ』という感じでした」と、まだ驚きを隠せずにいた。

 現役時代、千代の富士に猛烈に鍛えられて横綱に上り詰めたのは有名な話。「下のころから稽古をつけてもらって、力を抜いてくれなかった、と言いますか、ありがたかった。(稽古での胸出しを)毎日やってくれて、私も弱音を吐かずに毎日ぶつかった。お互いが意地と意地。絶対に出してくれるし、絶対に嫌とは言わない。私にとっては一番の思い出です」と目を潤ませながら振り返った。

 そして「そのときの思い出をゆっくり…何年かたってから、2人でゆっくり飲みながらもう1度、話してみたかったなぁ」と悲しんだ。「兄弟子でしたが、もう1人の親方という感じが強かったかもしれないです。『本当にお疲れさまでした』と言いたい」と故人をしのんだ。