東前頭4枚目の宇良(25=木瀬)が涙の初金星を獲得した。立ち合いで横綱日馬富士の右腕にしがみつき、とったりを決めた。15年春場所の初土俵から所要15場所目の初金星は歴代2位のスピード記録で、日本出身力士では北勝富士と並ぶ最速となった。65キロ未満の軽量級だった関学大2年から5年で体重137キロまで増量。8日目の白鵬戦は完敗だったが、創意工夫を重ねてきた業師は日馬富士を土俵にはわせ、歓喜の涙をこぼした。

 立ち合いの低さ、鋭さが武器の日馬富士より、宇良はさらに低く前に出た。下から当たると同時に右腕をつかんだ。振り回すように左に回りながら、両腕でしがみつくように引っ張り込む。気付けば横綱が前のめりに倒れていた。

 乱れたまげに上気した顔。ぼうぜんとしていた。勝ち残りで土俵下にいるときも目はうつろ。NHK中継のインタビューで涙をこぼした。「もう力を出し切れて良かったです…。明日からも頑張ります…」。声は震え、指で目を押さえ、鼻をすすった。支度部屋でも泣いた。「本当に分からないです」「いやもうちょっと…ないですね」。いつも取り口を聞かれると定番のように「分からないです」とはぐらかすが、この日の「分からない」は正真正銘だった。

 涙には理由がある。関学大2年だった12年8月26日、西日本学生個人体重別選手権65キロ級1回戦で敗れた。自分より2センチ低く、4キロ軽い京大の1年生に負けた。全国大会に行けず、無差別級に転向した。