横綱日馬富士の平幕貴ノ岩への暴行問題に揺れた九州場所は、千秋楽も異例の言動が続いた。横綱白鵬(32=宮城野)は優勝インタビューで「日馬富士関と貴ノ岩関を再び、この土俵に上げてあげたいなと思います」と先走り気味に宣言し、問題が発生した本場所ながら万歳三唱で締めた。日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は問題を陳謝し、土俵で声を詰まらせた。事態の究明に向けた取り組みは、本場所後から本格化する。

 両手を振ってファンの声援に応えていた白鵬の表情が一変した。土俵脇での優勝インタビュー。史上初の40度目の優勝の感想を求められると「その前にこの場を借りて場所中に水を差すようなことがあり、全国の相撲ファンに対し力士代表としておわび申し上げたいと思います」と切り出し、こう続けた。

 白鵬 土俵の横で誓います。場所後に真実を話し、うみを出し切って、日馬富士関と貴ノ岩関を再び、この土俵に上げてあげたいなと思います。

 館内には大歓声が響き渡ったが日馬富士の暴行問題は鳥取県警が捜査中。日本相撲協会の危機管理委は、被害者の貴ノ岩への事情聴取さえ、師匠の貴乃花親方(元横綱)が拒否したためできていない。現役トップに処分の決定権はないが、自らの判断で土俵に誓ってしまい、音頭を取って観衆と万歳三唱。暴行現場に同席していた力士のこの行為は、現状にそぐわないと指摘する親方もいた。

 支度部屋に戻った白鵬は2人を土俵に上げるという発言について「理事長の協会あいさつを横で聞いていて(2人が)帰ってきてもらえたら」と話した。白鵬発言を伝え聞いた八角理事長は「危機管理委に任せているから」と踏み込んだ発言は避けた。

 八角理事長の「協会あいさつ」は十両の取組の合間に行われた。冒頭から「横綱日馬富士の問題により、皆さまには多大なご心配とご迷惑をおかけしたことを心よりおわび申し上げます」と頭を下げた。観衆から「頑張れ」などの声援が耳に入ると、涙こそ見せなかったが唇を震わせた。「このような状況にもかかわらず、初日より大勢の皆さまにご来場いただきましたことは誠にありがたく、心より御礼申し上げます」と読み上げるまでに7秒、4秒、2秒と3度も言葉を詰まらせた。

 八角理事長は「お騒がせしたのは事実。土俵の上からというのもと思ったけど(『日馬富士の問題』という言葉を)入れなければいけないと思った。早急に解決できるよう頑張ります、そういう気持ちであいさつした」と振り返った。

 今日27日にも暴行現場に同席した白鵬は鳥取県警の事情聴取を受け、八角理事長は横綱審議委員会(横審)から質問を受ける。暴行問題の全容解明までまだ先は長い。