貴乃花親方(45=元横綱)が壮絶に落選した。日本相撲協会は2日、東京・両国国技館で役員候補選挙の投開票を実施。定員10人に対し、11人が立候補した理事候補選挙で貴乃花親方は最下位にとどまった。全101人の親方衆が投票したが、獲得したのは2票。初めて貴乃花一門から2人を擁立し、もう1人の阿武松親方(元関脇益荒雄)は当選したが、ダブル当選はならなかった。

<貴乃花親方惨敗の要因>

 選挙といいながら、立候補者は公約を掲げるわけではない。一門ごとに投票数が調整される。一般市民にとっては「何のための選挙?」「これでは協会の体質は変わらない」という声が起きるのも無理はない。そんな中で貴乃花親方は、1日付で部屋のホームページで「マニフェスト」ともいうべき理想像を掲載し、世間の支持を得た。

 一方で相撲界からの反応は悪かった。票に結びつかなかったことがそれを証明している。複数の一門が貴乃花親方を警戒して緊急会合を招集。結束を乱した場合、追放をちらつかせた一門もあるなど“造反票”対策は徹底されていた。それを差し引いても2票止まりだったのは、理事解任理由にもなった、協会執行部への非協力的な姿勢とこれまで8年間の実績による。少数派のため、仮に理事会で提案しても否決されたかもしれない。だが協会執行部と対立しても、何かを成し遂げようという気概の見える場面は少なかった。

 6つある一門の親方衆にとっては、理事に1人も送り込むことができなければ自身や弟子にとって、不利に働く可能性が高まると考える。そのため、一門は結束力を高める。一般市民が期待するのは、そんな一門制度すらなくすことだと思う。

 だが今回、終わってみれば貴乃花親方は投開票前日まで一門会を開き、どこよりも一門の枠にこだわっているように映った。そんな動きが逆に、直前に各一門に緊急招集させ、一門の結束を固める、皮肉な結果となった。【高田文太】