大相撲で貴景勝関(22=千賀ノ浦)の大関昇進が27日、正式に決まった。「平成最後の新大関」では、22歳の若武者の原点や素顔などに迫る。

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身長175センチがより小さく見えた。春場所千秋楽での三賞受賞者3人の記念撮影。2場所連続で技能賞を獲得した貴景勝が、190センチオーバーで巨漢の碧山と逸ノ城に挟まれる。身長は幕内で4番目に低い小兵力士。小3で相撲を始めた時から「体が小さいし無理、と言われるたびに逆にやってやろうと気合が入った」と、反骨心を原動力に変えてきた。

上背がないだけに体重増加に注力した。「臓器を押しやってまで胃袋が大きくなったと思う」。1カ月の食費を家族で約30万円かけてもらい、小学校卒業には身長160センチ、体重は相撲を始めた頃の30キロから80キロに増量した。小学生の時、角界は元横綱朝青龍が全盛。180センチ台前半と力士として大柄ではなかっただけに、父一哉さん(57)も「運動神経と闘争心とスピード、朝青龍を見て、体が大きくなくても超一流になれるんや」と勇気がわいた。

見た目よりも実用性だ。埼玉栄高時代はベンチプレスで同高相撲部で最高記録となる200キロを上げたが、今は数字にこだわらない。「胸の筋肉は、普通はこんなところは跳び出ない。(上半身を鍛えて)満足しがちだけど、逆三角形の体形は強くないから」。格闘技観戦が趣味で、参考は尻まわりや太ももが発達した「洋なし体形」のUFCの選手。自身もいわゆる肉付きが良く丸い体形の「あんこ型」で押し相撲の圧力を最大限発揮できるという。

食生活もストイックに取り組んできた。「小さいから、こういうところで差をつけないと」。サプリメントは20種類以上を摂取。初優勝した昨年の九州場所では、多いときで1日10個以上の卵を食べて話題を集めた。プロテインは「甘いのは余計だから」と、味をつけないプレーン。しかし、最近は考え方もまた少し変わった。食事を楽しむ快感が、細胞を活性化させるという。「栄養バランスも大事だけど、自分がおいしいと思うものを食べるのも大事。その辺のバランスは難しい」。最適な体づくりを常に模索している。【佐藤礼征】(おわり)