関脇御嶽海(26=出羽海)がライバル決戦を制し、2度目の賜杯を手にした。貴景勝、隠岐の海と三つどもえで迎えた千秋楽、本割で遠藤を下して12勝3敗。初の関脇対決となった優勝決定戦は貴景勝を万全の相撲で寄り切った。白鵬、鶴竜の両横綱を除く現役力士で初の2度目の優勝。次世代を担う若手の中、昨年名古屋場所で最初に優勝した男が、またもライバルたちに1歩先んじた。

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御嶽海の相撲だった。五分の立ち合いから中に入り、攻め手を休めず寄り切った。決定戦の相手は、8日目の本割で屈した貴景勝。「負けたくない気持ちだった。番付で越されてますから」。大関昇進で先を越された年下のライバル。今後の角界をともに背負うべき相手に、もう後れは取れない。文句なしの内容で、館内のファンを沸かせた。

力だけじゃない。インタビューで「ありがとうございま~す!」とその場で1周、場内が爆笑した。客席の母マルガリータさん(49)から投げキッスを受け、笑顔で「ありがとう」と応じると、また爆笑だ。

御嶽海は今場所も、自分のスタイルを貫いた。

人前で稽古はしない。「見られると嫌。集中できない」。やるなら1人。他の力士が昼寝する間に稽古場に下り、汗を流す。

ジム通いはしない。東洋大2年の時、某有名ジムで3カ月ほど通って、やめた。動き、キレがおかしくなった。「最初は“かっこいい、俺も筋肉つけよ”と思ったけど」。以来、自重を使うトレーニング専門だ。

流されない。両横綱が休場し、貴景勝や自分に注目が集まったが、優勝争いの空気はシャットアウト。過去16場所在位した三役で1度だけの10勝に全力を注いだ。「横綱は(場所に)出たら2桁勝つ。だから、すごい」。11、12勝をコンスタントに稼ぐ自分になる-。優勝を意識したのは「決定戦前」と明かした。

稽古で力を出さない場所相撲と言われても、両横綱以外の現役力士として初の2度目の優勝に到達した。圧倒的存在感を見せる次世代のリーダーが、場内の観客に宣言した。

「そろそろみなさんの期待に応えて、11月場所で決めようと思います」

次の狙いは大関だ。先場所9勝、今場所12勝で、九州場所が大関とりになる可能性がある。昇進目安「直近3場所を三役で33勝」は12勝で届く。自分の流儀を貫く“異端児”が満を持して、勝負に出る。