幕尻の西前頭17枚目徳勝龍(33=木瀬)が、記録ずくめの初優勝に王手をかけた。平幕で1敗同士の正代との直接対決で、5日連続となる土俵際の逆転勝ちを収め、単独トップに立った。2敗の大関貴景勝が敗れ、優勝争いは1敗の徳勝龍と2敗の正代に絞られた。

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負け残りの土俵下、貴景勝の顔が悔しさで震えていた。「もっと強くならないといけない。上手を取られてしまった。そこがすべて」。優勝の可能性が消滅。「優勝する資質がなかった」と支度部屋でも悔しさを隠さず、はき出した。

次の大関候補と言われる朝乃山とは過去3勝2敗、相撲内容も互角のライバル関係だった。突き放した土俵際までは貴景勝のペース。しかし残されて左上手を取られた瞬間、体勢は逆転した。相手の上手投げに貴景勝も下手投げを打ち返す。だが四つ相撲では分が悪く、上手投げに屈した。

令和初の天覧相撲だった。天皇、皇后両陛下が場内に入場された際のテレビ映像を貴景勝は支度部屋で直立不動で見つめた。「陛下の前で恥ずかしい相撲はとれないと頭に入れていた。残念です」。大関として千秋楽まで優勝争いに絡まなければならない使命感も含め、悔しさがこみ上げた。

千秋楽は単独トップの幕尻徳勝龍と異例の割りが組まれた。貴景勝が賜杯の行方を左右する。その取組決定前に場所を後にしたが、「もうひと皮、ふた皮むけるには力不足だった。千秋楽は切り替えて、一生懸命頑張りたい」。変わらず土俵に集中する。【実藤健一】