正代が大関昇進を果たした。熊本出身では58年ぶりとなる新大関の素顔とは? 日刊スポーツでは「くまモン大関 正代直也」と題し3回連載。1回目は母の理恵さん(56)に幼少期からの歩みを聞いた。

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大関昇進伝達式には正代の両親も同席した。父巌さん(60)は「ドキドキは今まで以上です」。母の理恵さんも「こういう場にいるのが夢のよう」と初優勝と大関を一気にかなえた喜びに、ともに浸った。

幼少期の正代は「ビッグベビー」だった。3500グラムで生まれ、そこからすくすくと成長した。母理恵さんは「母乳が足りなかった」と振り返る。片方のお乳を飲み尽くし、もう一方を完飲しても足りずに泣きやまない。離乳食も早く、食べて成長して生後11カ月で歩き回った。祖母の正代正代(まさよ)さん(91)が作る煮物が大好物で、1歳で1升の餅を担いだ。強い足腰の土台は食だった。

母は「小さい時は素直でおとなしい、人の言うことを聞く子どもでした」。恵まれた体格を誇りながら、闘争心がない。理恵さんは「(家で稽古は)ないない、全くない。相撲にまじめじゃなかったんです」。家でゴロゴロしながら、アニメを見るのが至福だった。東農大1年時には「もう帰りたい」と泣き言を言ったという。「大学の相撲部は1年生がやはりきついらしいです。2年になってからは何も言わなくなりました」と理恵さんは振り返る。

争うことが嫌いな少年が究極の競争社会、相撲界でもまれて強くなった。この日、母の理恵さんは「すごい優しい、気遣ってくれる息子です。偉業を成し遂げたんだと、しみじみ感じます」。心も体も大きく成長した姿を信じられないようにながめていた。【今村健人、実藤健一】