大相撲の幕内格行司、木村銀治郎(46=峰崎)の初の著書「大相撲と鉄道」がこのほど、交通新聞社新書から出版された。この本の魅力について、銀治郎に聞いた。後編です。【取材・構成=佐々木一郎】

-本書では、角界における伝説の夜行列車「ゆうづる」についても解き明かしています。今から50年以上前、当時の二子山親方(元横綱初代若乃花)が、青森で2人の少年をスカウトし、同じ列車で上京。2人はのちに横綱2代目若乃花と横綱隆の里になりました。本書では、あの列車を特定しました

「あの列車について、正確に書かれた文献がまったく見当たらなかったんです。いいかげんに書かれたものもありました」

-上京したのは昭和43年6月6日と書かれていましたが

「いろんな文献で、日にちは分かっていました。当事者が後年語っていた内容には、やや記憶違いになっていた部分もありました。例えば、寝台3段の真ん中に寝たって書いてあったものもありましたが、A寝台に3段はないので、真ん中に寝るのは不可能です。文献は花田勝治さん(元横綱初代若乃花)や、若三杉さん(のちの横綱2代目若乃花)の自伝や、ベースボール・マガジン社のDVDマガジンなども確認しました。当時の時刻表は、本当は鉄道博物館で調べたかったのですが(昨年の一時期は)閉まっていたので、ヤフオクで落札しました」

-時刻表で、ゆうづるは1日1往復だったことがわかったんですね

「そうです。何時まで寝台が使えるかどうかも時刻表を見れば書いてあります」

-鳴戸親方(元横綱隆の里)が後年「茨城県に差しかかるころには外は明るかった」と証言したことをもとに、本書では列車の通過時刻と日の出の時刻まで調べてありました

「日の出の時間は、気象台のホームページで調べました。資料が公開してあるサイトがあるんです」

-すべて分かった時は、どう思いました

「調べれば分かることだったんで…。きちんとやっておかないといけないんじゃないかと思っていました。自分もちょっとこだわっていたところなんです」

-コロナ禍にあり、今は本場所の地方開催や巡業がありません。早く元に戻って欲しいですね

「僕も丸1年、東京駅に行っていません。7月は、名古屋に行きたいですね。鉄道と一緒でトンネルをくぐったら、必ず出口はあるんですよ。どんなに真っ暗な長いトンネルでも前に進んでいれば光は見えてくる。あとは抜けるだけです。僕らは止まっちゃいけないんです。まだトンネルの中にいますが、早く抜けられるように努力しないといけませんね」

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