今場所の隆の勝は自信を持って当たっています。その後、御嶽海に対して右を差して出足を効かせた一気の攻めも完璧。実は前半戦から、隆の勝の相撲に進化を感じていました。関脇や平幕上位に定着していた数場所前は、頭から行って右を差すという、1つの動作しかなかったんです。三役から陥落し4枚目に落ちた今場所はどうかな、と思っていましたが、突っ張ってみたり、差した右は下手を取って投げを打つなど、攻撃のバリエーションを増やしました。相撲を覚えた、とも言えるでしょう。ようやく一皮抜けた隆の勝の相撲が完成して、これで三役にも戻れると思います。

力士には壁に当たって、あきらめるタイプの人がいます。1度、あきらめると番付が戻りません。あきらめない人が横綱、大関になれます。隆の勝も相撲人生の土俵際に追い詰められかけたところから、技術的なことをコツコツと積み上げながら、壁を自力でぶち破って今場所を迎えていると思います。地味な存在ですが、頑張っている姿はプロ経験者の私にも伝わってくるし、こういう力士の存在は本当にうれしい。優勝争いのチャンスも大きいですが、隆の勝の相撲人生も後半戦が楽しみです。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)