元関脇安美錦の安治川部屋が16日、東京・江東区で部屋開きを行った。昨年12月に伊勢ケ浜部屋から独立し、同区内の仮住まい先で創設する部屋の準備をしてきた。弟子たちが相撲に専念できるようさまざまなこだわりを取り入れた4階建ての部屋を目の前に、同親方は「新たな一歩を踏み出した気持ち」と晴れやかな笑顔を見せた。

部屋開きには安治川親方の師匠、伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)、同じ伊勢ケ浜一門の浅香山親方(元大関魁皇)らが出席した。厳粛な雰囲気で行われた土俵開きを終えて安治川親方は「国技館でも行われている儀式の土俵祭りからスタートしたいと思いがありました。この機会に相撲はたくさんのつながりがあるということを弟子にも見せたかった」と狙いを説明。「ここからまた引き締めて一生懸命指導していかなければいけない」と気持ちを新たにした。

「相撲部屋の主役は力士」と豪語する親方だけあって、細部のこだわりから弟子たちにより良い環境を作ろうと奮闘した様子が見える。1階は稽古場、2階はちゃんこ場と大部屋を設けた。その間の階段には連々と受け継がれた相撲文化を体感してもらう工夫を取り入れようと、壁紙に平安時代と江戸時代の相撲の様子を描いた錦絵を掲示した。

また、厳しい稽古でも気分を上げてもらおうと、稽古場の壁を明るい色合いにした。「(相撲部屋は)強くなる場でもあるし、人間としても成長できる場でもある」と同親方。安治川部屋の力士としての自覚を持ってもらおうとあえて裏口を作らず正面玄関から出入りするよう促す。力士としても、人としても1人前の存在になってもらおうとの思いは強い。

入門時に現在の伊勢ケ浜部屋は「安治川部屋」だった。思い入れがある名で新たなスタートを切った同親方は「安治川部屋という名前でやらせていただいて本当に感謝してる」。一家の主としてここで満足するつもりはない。「やはり名前を大きくしていくために一生懸命頑張らなければいけない」と誓いを立てた。【平山連】