大相撲の「令和の怪物」こと西前頭9枚目の伯桜鵬(20=宮城野)が、秋場所(10日初日、東京・両国国技館)を全休することが決まった。4日、都内の部屋で師匠の宮城野親方(元横綱白鵬)と本人が明かした。7月末から約1カ月の夏巡業を左肩関節亜脱臼で全休。8月31日に都内で左肩の手術を受けていた。復帰時期は未定だが、すでに半年先を見据えており、年内の本場所出場は絶望的とみられる。新入幕の7月名古屋場所は優勝を争い敢闘賞と技能賞を受賞。横綱の夢に向けての決断で「強くなって帰ってくる」と誓った。

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同部屋の力士が稽古する様子を、伯桜鵬は上がり座敷で見つめていた。Tシャツ姿で左腕には装具が施されていた。ただ、わずかな時間も無駄にしまいと“見取り稽古”で、力士たちの動きに熱視線。ゴムチューブを使ったり、一方の足を上げてバランスを取ったりと下半身の強化に余念がなかった。ただ復帰に時間を要するのは明白。宮城野親方は稽古後、「秋場所は休場します」と明言し「全休か」の問いには「はい」と即答。8月31日に左肩を手術したことも明かした。

伯桜鵬は左肩について「まだ痛みはある」としながらも気落ちした様子は見せず、胸を張って言った。

伯桜鵬 焦っても仕方ない。しっかり治す。(番付が)どこまで落ちてもいいと思っている。幕内にいることが目標ではない。自分の夢に向かって手術を決めた。応援してもらって注目してもらって、落ちるのが怖かった。今は半年後の姿が見えている。今よりも強くなって帰ってくる。

5月に左肩を故障してから、本場所はほとんど大量のテーピングを施して出場した。千秋楽まで優勝を争った名古屋場所。患部は「限界だった」という。鳥取城北高を卒業後、昨年の入門前には右肩を手術。もともと故障していた右に続き、左もメスを入れた。

伯桜鵬 もともと両肩の関節がすごく小さい。人よりは肩が弱かった。学生時代は細かいトレーニングとかで鍛えてカバーしていたけど、プロは不安を抱えた状態では勝てない。復帰のめどは分からないけど、(今回の手術の担当医は)右肩の手術もしてもらった先生。右は手術してから1度も脱臼していないので、今回も心配はしていない。

宮城野親方は「骨も欠け落ちている」と補足し、脱臼癖があるわけではない。同親方は「新しくつくっていくしかない。残念ではあるけど万全に戻して」と、完治を優先させる方針だ。 秋場所全休なら11月の九州場所は十両陥落が確実。すでに半年後を見据えており、年内の本場所復帰は絶望的で、さらに全休が続けば、来年1月の初場所は幕下の見通しとなる。それでも伯桜鵬は「復活して、また上がっていくしかない」ときっぱり。大きく飛躍するには1度、しゃがみ込む時間が必要。「令和の怪物」は横綱の夢に向けて、力を蓄える道を選んだ。【高田文太】

◆伯桜鵬の先場所VTR 新入幕だった7月の名古屋場所で、千秋楽まで優勝を争い11勝4敗。本名の落合から改名して最初の場所は、幕尻ながら好成績で12日目に小結阿炎と初の三役戦が組まれ、これを押し出して白星。10日目から5連勝、関脇豊昇龍、平幕北勝富士と11勝で並んで千秋楽を迎えた。109年ぶりの新入幕優勝が懸かる千秋楽は豊昇龍戦。先に取組を終えた北勝富士が12勝目を挙げており、勝者が優勝決定戦に進むという状況で敗れた。貴花田(後の横綱貴乃花)に次ぐ年少2番目の19歳11カ月での優勝はならなかったが敢闘賞、技能賞に輝いた。