日本相撲協会は31日、東京・両国国技館で大相撲春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)の番付編成会議と臨時理事会を行い、関脇琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)の大関昇進を全会一致で承認した。

千葉・松戸市の佐渡ケ嶽部屋で昇進伝達式に臨んだ琴ノ若は、協会から送られた使者から昇進が決まったことを伝えられると「謹んでお受け致します。大関の名に恥じぬよう、感謝の気持ちを持って、相撲道に精進して参ります」と、口上を述べた。

伝達式後の会見で、琴ノ若は「緊張しました。秀ノ山親方(元大関琴奨菊)であったり、鳴戸親方(元大関琴欧洲)であったり。やっと、見てきた光景を自分でできるようになった」と、祖父に元横綱琴桜の先代師匠、父に元関脇琴ノ若の現師匠を持ち、生まれた時から相撲部屋で暮らしてきて、偉大な兄弟子たちと同じ地位になったことへの感慨を述べた。

ただ、大関に昇進した実感について問われると「もうちょっと時間をください」と、照れ笑いしながら話した。

「感謝の気持ちを持って」。高校3年時には主将も務めた、母校の埼玉栄高相撲部の部訓「感謝の気持ちと思いやり」に由来する言葉を口上に込めた。四字熟語などは入れず「難しいことを考えないで、自分が言おうと思ったことを思った。中学、高校で山田先生(=相撲部監督)に教えていただき、この言葉は入れたかった」と明かした。

会見に同席した佐渡ケ嶽親方は「最高にうれしいです。父親として。師匠としても。本当に…。こんな日が来るとは…。うれしいの一言です」と、目にはうっすらと涙を浮かべて話した。入門時に師匠と弟子として、一定の距離感を保っていたが、この日ばかりは「夜は、おかみと3人で『家族会議』ですね。(伝達式に関連するさまざまな行事、対応などが)終わったら、ゆっくり話したい」と、この日だけは父の顔になり、目じりを下げて話した。

新大関誕生は昨年名古屋場所後の豊昇龍以来、半年ぶりで、春場所は1横綱4大関となる。4大関は21年名古屋場所以来。日本出身大関の誕生は、22年初場所後の御嶽海以来、2年ぶりとなった。

佐渡ケ嶽部屋からは、11年秋場所後の琴奨菊以来、13年ぶり7人目。琴ノ若は千葉県松戸市出身で、千葉県出身の大関は、55年秋場所後の松登以来、69年ぶりとなった。

琴ノ若は1月に行われた初場所で、13勝2敗の優勝同点という好成績を挙げた。ともに関脇の昨年秋場所で9勝、同九州場所で11勝。三役で3場所33勝という大関昇進目安に到達し、初場所の千秋楽で昇進が事実上決まっていた。

◆琴ノ若傑太(ことのわか・まさひろ)本名・鎌谷将且(かまたに・まさかつ)。1997年(平9)11月19日、千葉・松戸市生まれ。2歳から相撲を始め、埼玉栄高3年時に主将として全国高校総体で団体優勝。15年九州場所で初土俵。番付デビューの16年初場所で序ノ口優勝。19年名古屋場所新十両、20年春場所新入幕。23年初場所で新三役の小結に昇進。同年秋場所で新関脇。三賞は敢闘賞5回、技能賞1回。得意は右四つ、寄り、押し。父は元関脇琴ノ若の佐渡ケ嶽親方、母は元横綱琴桜の長女・真千子さん。189センチ、177キロ。血液型AB。