大相撲初場所で優勝同点の13勝を挙げた琴ノ若(26=佐渡ケ嶽)が、満場一致で大関に昇進した。

日本相撲協会は1月31日、東京・両国国技館で大相撲春場所(3月10日初日、エディオンアリーナ大阪)の番付編成会議と臨時理事会を行い、承認した。千葉・松戸市の部屋で行われた昇進伝達式には、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)と並んで臨んで口上。「感謝の気持ちを持って」と祖父で元横綱琴桜の先代師匠の言葉と、母校埼玉栄中、高相撲部の部訓を込めた。大関琴ノ若として1場所土俵に立ち、その後、50年ぶり「琴桜」復活となる改名の意向を示した。

   ◇   ◇   ◇

父はうっすらと涙を浮かべていた。琴ノ若の隣で会見した佐渡ケ嶽親方は「最高にうれしいです。父親として。師匠としても。こういう場が来るとは…」とかみしめていた。1人息子が苦しむ姿は何度も見てきた。東幕下2枚目だった19年夏場所は3連勝後に3連敗。当時、琴鎌谷のしこ名だった息子が、祖父の仏壇の前で泣いている姿を見て「今は声をかける時ではない」と感じた。伸び悩み幕下で3年近くが経過していた。だが最後の7番相撲に勝ち、新十両昇進。「壁を乗り越えた。もう大丈夫だと思った」と振り返った。

初の大関とりとなった初場所は「ガチガチに緊張するかと思ったので『大関は通過点だぞ』と言った」という。「でも冷静に相撲を取っていてビックリ。先代の『負けてたまるか』の気持ちが乗り移っていた」。精神力は、自身を超えたと確信した。入門以来、師匠と弟子として距離を置いてきたが「夜は、おかみと3人で『家族会議』ですね。ゆっくり話したい」と笑った。十数年ぶりに親子に戻る時を楽しみにしていた。

 

〈琴ノ若の大関昇進〉

◆佐渡ケ嶽部屋 部屋としては11年秋場所後の琴奨菊以来、13年ぶり7人目の大関誕生となった。現師匠になってから4人目の大関だが、新弟子から育てた大関は初。7人のうち横綱まで昇進は琴桜のみ。その琴桜の先代師匠から現師匠は「横綱をつくれ」と厳命されている。

◆千葉県出身 琴ノ若は千葉・松戸市出身。県出身者としては55年秋場所後昇進の松登以来、69年ぶり。

◆親子で伝達式 ともに最高位大関、しこ名が増位山の親子。元大関貴ノ花が育てた、ともに最高位横綱の若乃花と貴乃花。父が関脇、子が大関の、ともにしこ名栃東の親子。この4人(3家族)が過去にいる。