今年も12月に入ってゴールデン・グローブ賞や全米俳優組合(SAG)賞のノミネートを始め、ロサンゼルス映画批評家協会賞やニューヨーク映画批評家協会賞、ゴッサム・インディペンデント映画賞など各種映画賞が発表されていますが、今年はストリーミング配信大手Netflixの作品が賞レースを席巻しています。今年2月24日に行われた第91回アカデミー賞ではNetflixが配給を手掛けた「ROMA/ローマ」が外国語映画ながら作品賞を含む最多10部門にノミネートされ、「ストリーミングサービスの映画はオスカー受賞に価するのか?」という論議が巻き起こりました。「ROMA/ローマ」は結果的には外国語作品賞に輝いたものの作品賞受賞は逃しましたが、これを受けてスティーブン・スピルバーグ監督は「ストリーミング配信サービスの映画はアカデミー賞の対象から外すべきだ」との持論を展開。映画は劇場のスクリーンで観るべきか、自宅でストリーミングサービスで楽しむ作品も映画として認めるべきか様々な論議を巻き起こしましたが、今年はマーティン・スコセッシ監督がNetflixとタッグを組んだ「アイリッシュマン」やスカーレット・ヨハンソンとアダム、ドライバーが離婚に直面した夫婦を演じるNetflixオリジナル映画「マリッジ・ストーリー」が各賞で候補入りしており、Netflix旋風が吹き荒れています。

9日に発表されたゴールデン・グローブ賞では、「アイリッシュマン」が作品賞、監督賞、ジョー・ペシとアル・パチーノが揃って助演男優賞にノミネートされるなど5部門で候補入り。「マリッジ・ストーリー」も作品賞、ヨハンソンが主演女優賞、ドライバーが主演男優賞など6部門にノミネートされています。他にも「2人のローマ教皇」や「ルディ・レイ・ムーア」が作品賞に名を連ねるなど映画部門だけで圧巻の17部門でのノミネートを達成し、テレビ部門と合わせると計34のノミネーションを獲得する快挙を成し遂げました。また、9日に発表されたSAG賞でも「アイリッシュマン」はキャスト賞、スタント・アンサンブル賞、アル・パチーノとペシが共に助演男優賞の候補に名を連ねるなど最多タイの4部門にノミネート。「マリッジ・ストーリー」もヨハンソンとドライバーが共に主演女優、男優賞に名を連ねるなど3部門でノミネートされており、ここでもNetflix作品が上位ノミネートを独占。他にも、放送映画批評家協会賞では「アイリッシュマン」が作品賞、監督賞、デ・ニーロの主演男優賞など最多14部門に、「マリッジ・ストーリー」も作品賞や監督賞など8部門にノミネートされ、強さを見せつけています。

「アイリッシュマン」はすでにニューヨーク映画批評家協会賞で作品賞とペシが最優秀助演男優賞を受賞しており、「マリッジ・ストーリー」もインディペンデント映画を対象にしたゴッサム・インディペンデント映画賞で作品賞とドライバーが最優秀俳優賞を受賞したほか、脚本賞と観客賞の4冠に輝いています。両作は共に来年1月13日に発表される第92回アカデミー賞候補の最有力にあげられていますが、他にも20日に配信されたアンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスを主演にカトリック教会の裏側に迫る実話を基にした「2人のローマ教皇」も注目されており、2020年代はいよいよ配信サービスのオリジナル作品が映画賞を席巻する時代になりそうです。ゴールデン・グローブ賞授賞式は現地時間で来年1月5日、SAG賞授賞式は1月19日に行われます。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)