連邦最高裁が女性の人工妊娠中絶は合憲だとしてきた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆したことで、アメリカでは女性の中絶の権利を巡って揺れています。

妊娠15週以降の人工妊娠中絶を原則禁止したミシシッピ州の法律を巡って憲法違反にあたるのかどうか争われていた裁判で、先月24日に最高裁が半世紀前の「中絶は憲法で認められた女性の権利」との判決を覆し、州法は合憲だとの判断を示したことでハリウッドセレブたちからも抗議の声があがっています。

ドラマ「ドーソンズ・クリーク」や「クーガータウン」などで知られる女優ビジー・フィリップスが、先月末にワシントンDCにある連邦裁判所前で行われた抗議デモに参加し、警察に身柄を一時拘束されるなど世間の注目も高まっているこの問題について、様々な形で抗議するセレブたちを紹介します。

■ホールジー

ヴォーグ誌に寄せたエッセイで、過去に3度流産した後に敗血症になるリスクを避けるため中絶したことを告白したホールジーは、「その選択が私の命を救い、(その後の)息子の出産につながった」とコメント。自身の命を救うために中絶を選択せざるを得なかったと明かし、「自分の命を救うことに同意できないのはおかしな話」と述べ、自身の経験を踏まえてこの判決に異議を唱えています。

■ケイティ・ペリー

ケイティ・ペリー(13年撮影)
ケイティ・ペリー(13年撮影)

4日の独立記念日にケイティ・ペリーは、自身の大ヒット曲「ファイヤーワーク」の歌詞の一部を引用して「“Baby you’re firework(ベイビー、あなたは花火よ)”は10点だけど、米国の女性の権利は実際の線香花火よりも小さい」とツイート。独立記念日ということもあり、花火を引き合いに中絶問題を批判したものの、ペリーは先月行われたロサンゼルス市長選で中絶に反対していたリック・カルーソ候補を支持していたことから、ネット上では「この件に口を出すべきではない」と批判される一幕も。

■オリヴィア・ロドリゴ

ティーンに絶大な人気を誇るオリヴィア・ロドリゴは、この問題について最高裁判事が書いた草案が流出したことを受けて、今年5月の公演中に「私たちの体を政治家の手の中に置いてはだめ。私たちの前の世代の多くの人たちが大変な努力をして手に入れた安全な中絶をする権利を守るため、声を上げることを願います」とファンに呼びかけました。

先月25日にイギリスで行われた野外フェス、グラストンベリー・フェスティバルでも、「多くの女性と少女たちが命を落とす」と危機感を吐露し、判決を覆す判断を示した5人の判事の名前をあげて「大嫌い」と叫び、スペシャルゲストのリリー・アレンのヒット曲「Fuck You」を熱唱。

■ビリー・アイリッシュ

投票を呼びかけたり、気候変動問題にも熱心に取り組むビリー・アイリッシュは、新曲「TV」の中で女性から中絶の権利を奪う判決より、名誉毀損(きそん)で元妻で女優のアンバー・ハードを訴えたジョニー・デップの裁判の方が注目されていることを皮肉たっぷりに歌っています。「インターネットでは映画スターの裁判で盛り上がっている」「一方で、ロー対ウェイドの判決は覆されようとしている」と歌ったアイリッシュは、昨年もライブ中にこの問題について「オヤジたち、まじムカつく。黙ってろ」と中指を立てて抗議したことも話題になりました。

■マヤ・ホーク

「キル・ビル」などで知られるユマ・サーマンと元夫イーサン・ホークとの間の娘マヤ・ホークは、トーク番組でこの問題について「母が10代の頃に中絶していなければ、私は誕生していなかった」とコメント。母サーマンは昨年テキサス州で中絶を禁止する法案が成立した後、ワシントン・ポスト紙に自身の中絶体験を寄稿し、「養育能力のない経済的に恵まれない人々に対する差別」と訴え、立場の弱い女性に与える影響について言及していました。マヤも「母が(中絶に際して)安全で合法的な医療にアクセスできていなければ、両親の人生は狂わされていたはず」と述べています。

■テイラー・スウィフト

テイラー・スウィフト(14年撮影)
テイラー・スウィフト(14年撮影)

ミシェル・オバマ元大統領夫人が投稿したツイートをリツイートし、「これが私たちが置かれた現状であるということは、とても恐ろしい」とコメントしたテイラー・スウィフトは、女性たちが何十年もかけて闘ってきた自分の体に関する権利が奪われたことに抗議の意を示しています。

■マライア・キャリー

判決が覆ったことを受け母親でもあるマライア・キャリーは、「目の前で女性の権利が崩壊している世界に私たちが住んでいる理由を11歳の娘に説明するのは、本当に理解しがたく、気が滅入る」とツイート。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)