トランプ米大統領が、外国で製作されて米国に輸入されるすべての映画に対して100%の関税を課す方針を発表し、ハリウッドに大きな衝撃をもたらしています。
自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、米商務省と米通商代表部に指示をしたと発表し、「米国の映画産業は急速に衰退している」と理由を説明。他国が映画製作者とスタジオを米国から引き離そうとあらゆる優遇措置を行っていると非難し、「安全保障上の脅威」と述べています。また、それに加えて「メッセージで、プロパガンダだ!」とも主張しており、「我々は再び米国で映画が製作されることを願う!」と記しています。
しかしCNNは、映画は知的財産であって商品でははく、サービスの一種だと伝えており、関税の対象にはならないと報道。サービスに対してどのように課税が課せられるのか不明だとし、この関税は米国の映画製作に不利益をもたらす可能性があると伝えています。コンテナに積まれて中国から輸出される商品などと異なり、映画というコンテンツに対してどのように関税を課すのか、対象となる作品の範囲や評価、映画だけでなくテレビドラマも対象となるのかなど不透明な点も多く、業界に混乱をもたらしています。
詳細は不明ながら、映画会社が購入して米国内で公開する外国映画だけでなく、製作の一環として国外で撮影・製作された作品も対象となる可能性を示唆しており、そうなった場合は世界中に影響を及ぼす可能性があります。すでに近年多くのハリウッド映画が製作されている英国では、「フリーランスの製作者は職を失う」と戦々恐々となっているといいます。
ハリウッドでは近年、多くの映画が税の優遇措置があって製作費が安いカナダやニュージーランド、オーストラリアやアイルランド、英国などで撮影やポストプロダクションを行っており、ハリウッド映画ではあっても海外の資本も多く入っています。例えば2023年に大ヒットした「バービー」は、舞台は南カリフォルニアであるものの主な撮影は英国のリーブスデンにあるワーナー・ブラザース・スタジオで行われています。また、税優遇に加えて賃金が安いことなどからブルガリアやルーマニアなど東欧も低予算のアクション映画などが数多く製作されており、ネットフリックスの「アダムス・ファミリー」のスピンオフ「ウェンズデー」も撮影のほとんどがルーマニアの首都ブカレストで行われています。
また、ジェームズ・キャメロン監督の大ヒット作「アバター」シリーズも製作拠点はニュージーランドのため、関税の対象となる可能性があります。「アバター」は、シリーズ第3作目となる「アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ」が今年12月の公開を予定しており、仮に関税が適用されれば打撃を受けることは避けられそうにありません。
関税が現在製作中の映画やすでに完成している作品にも適用されるのかは不明ですが、もしそれらの作品も対象となった場合に「アバター」以外に影響を受けそうなのが、今月23日に公開されるトム・クルーズ主演の「ミッション:インポッシブル・ファイナル・レコニング」です。同作は、ノルウェーやマルタ島、南アフリカなど世界各国でロケが行われており、関係者にとって頭痛の種になっていることでしょう。
また、クリストファー・ノーラン監督の神話的アクションとなる最新作「オデュッセイア」(2026年公開予定)もモロッコを含むさまざまな場所で製作中ですし、マーベル・スタジオはロンドンで「アベンジャーズ/ドゥームデイ」(26年5月公開予定)の製作をスタートさせたばかり。ほかにも「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」(26年7月公開予定)もロンドンで撮影中だといわれています。
トランプ大統領は、国内で映画を製作することを望んでいるものの、実際にはコスト高などの面から中規模作品や低予算映画は今後製作そのものが中止される可能性も取り沙汰されており、映画産業にとって得ることよりも失うことの方が多いとの声も出ています。また、関税分がチケット代金やストリーミングの定額料金の値上げという形で映画ファンの負担となることも現実味を帯びており、関税によって多くの商品が値上がりしている今、娯楽として楽しむ映画のあり方までも一変させる可能性が取り沙汰されています。
【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)








