落語芸術協会(桂歌丸会長)所属の落語家桂夏丸(33)と講談師神田蘭(年齢非公表)が5月に真打ちに昇進。同月上席(1~10日)の新宿末広亭を皮切りに昇進披露興行を行う。

 群馬育ちの夏丸は、高校2年の時に桂幸丸のもとに弟子入り志願。結局、高校を卒業してからと、03年に正式入門した。蘭はもともと女優志望で、人気ディレクターだった和田勉氏主宰「ドラマスクール」で指導を受けた。その後、夏木陽介氏の「夏木プロ」を経て、講談に魅了されて04年に神田紅に入門した。落語と講談、経歴も異なる2人だが、共通点も多い。キーワードは「相撲」と「歌」。

 夏丸は祖父母の影響で、千代の富士全盛時代から相撲を見始め、保育園から帰ると、横綱の土俵入りから結びまで見ていたという。今も趣味は大相撲観戦で、芸人以外で尊敬する人は、横綱貴乃花、大乃国、大関魁傑、増位山で、横綱の土俵入り形態模写が得意。夏丸の土俵入りを見た大相撲ファンの漫画家能町みね子さんは「眼前でその勇姿を拝見し、神々しさに息をのみました。型を極めて、なお精進される様は、他の落語家の手本であり、落語界の宝であります」と絶賛している。

 蘭は土俵入りこそしないが、話題の人である貴乃花親方の部屋の祝勝会で司会したこともあるという。ある宴会で蘭の「越の海」という相撲講談を聞いた貴乃花が、2日後の仲間の親方との会食の場で「阿武松」をやってもらえないかと頼んだという。蘭にとって十八番でないが、初対面の貴乃花の「死ぬ気でやったら、できないことはないですよ」との言葉に引き受けたという。その結果は、貴乃花の次の言葉に尽きる。「仲間の親方たちがどんなに心をつかまれたか言うまでもありません」。

 歌では、夏丸は筋金入りの歌謡曲好き。祖父母の影響で昭和歌謡と演歌が好きになり、初めて買った昭和歌謡のカセットテープは藤山一郎さん。特技は歌謡シューで、高座で歌うことも度々ある。蘭も歌あり、踊りありのレビュー講談を得意とし、「オペラ講談・トゥーランドット」などを演じる。歌が大好きな2人だけに、5月中席(11~20日)の浅草演芸ホールでの披露興行では、吉永小百合・橋幸夫の「いつでも夢を」をデュエットするという。

 披露興行のチラシに掲載されているツーショット写真は仲むつまじい様子で、副会長の三遊亭小遊三も「チラシは演歌歌手のようでもあり、夫婦のようでもある。とにかく華やかな雰囲気だね」と笑う。夏丸は「老若男女が楽しめる落語をやって、印象に残る落語家になりたい」と言えば、蘭も「大看板になるのが夢。社交ダンスもして、歌って、講談をするエンターテインメント講談を目指したい」。強烈なインパクトを放つ2人であることは間違いない。【林尚之】