10代の頃のもどかしさ、いらだちを思い出した。みずみずしい描写には説得力がある。これが長編デビューとなる柳明日菜監督が現役高校生だった一昨年、実体験をもとに撮った。
だらだらと日々を過ごす高校生の蒼(柳)は、生活指導のペナルティーとして不本意ながら見た「東京物語」に心を奪われる。主演の笠智衆はくしくも母校の大先輩だった。映画の魅力に取りつかれ、名画座通いが日課に。コンクールに向けて脚本も書き始める。
蒼が事あるごとに早世した草創期の天才監督・山中貞雄の名前を挙げるなど、随所に柳監督の映画愛がのぞく。繰り返し見た名画の影響だろう。故郷熊本・玉東町の風景をうまく使い、映像に奥行きがある。
父親とのぎくしゃく、ひたすら冷静でどこか優しい担任教師…大人とのやりとりに、ならではのリアリティーがあり、引き込まれる。挿入歌の「レイニーブルー」(徳永英明)が疎外感の象徴として効いている。
熊本出身の高良健吾や笠智衆の孫、龍兼三も出演。インディ映画の雄、渡辺紘文監督がキーマンを演じるとともに監督補・脚本監修に名を連ねて、新進の才能を支えている。【相原斎】
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