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宝塚 ~ 朗らかに ~

宝塚 ~ 朗らかに ~

 夢の舞台を創り続けて100年あまり。時代とともにスターを生み、話題作を手掛けてきた宝塚歌劇団。華やかなステージを作り続ける裏側で日々、厳しいけいこと競争の中で切磋琢磨を続けている夕カラジェンヌの横顔を伝えます。

苦しさ、孤独…皇帝と共通点あるかも/柚希礼音

[2013年12月26日9時18分 紙面から]

波乱に満ちた皇帝ナポレオンの役に挑戦する柚希礼音(撮影・加藤哉)
波乱に満ちた皇帝ナポレオンの役に挑戦する柚希礼音(撮影・加藤哉)

 創立100周年イヤーの本拠地第1弾は、トップスター柚希礼音率いる星組ミュージカル「眠らない男・ナポレオン-愛と栄光の涯(はて)に-」で幕を開ける。仏革命後に皇帝に上り詰め、失脚した波乱の英雄を演じる柚希は「人間味を感じる」といい、漫画家池田理代子氏の「栄光のナポレオン-エロイカ」をイメージ。柚希流「人間・ナポレオン」を作り上げる。兵庫・宝塚大劇場は来年1月1日~2月3日、東京宝塚劇場は同2月14日~3月29日。

 宝塚100周年第1弾は、柚希ナポレオンだ。

 「ここ最近『おーっ』と思ってきました。いざ1月1日、どうなるんだろうとドキドキしますけれど(星組公演が100周年幕開けに当たり)奇跡のような感動があります。何よりも楽しんで、おじけづかないようにしたいと思います」

 小池修一郎氏の演出で、ナポレオンの少年時代から、皇帝へ上り詰め失脚、エルバ島へ追放される40代半ばまでを描く。音楽は、日本初演となった仏ミュージカル「ロミオとジュリエット」で、小池氏と組んだジェラール・プレスギュルヴィック氏が担当する。

 「小池先生の作品は歌が多いんですけど、今回はいつも以上(笑い)。一幕だけで30曲ぐらい。アルプスの山々が見えるような壮大な曲もあって、大好きです。冒頭は士官学校時代の15歳ぐらいから演じます」

 少数の下級生を率いたナポレオンが、多勢の上級生を相手に勝利した有名な雪合戦のエピソードも盛り込まれる。一幕は、ナポレオンが出世街道をひた走る様を描き、娘役トップの夢咲ねね演じるジョセフィーヌと出会い、結婚する、上り調子のドラマになる。

 「二幕が戴冠式からのスタートになり、最後は40代半ば。(役の)年代幅が広く、若い時代を子供っぽくし過ぎてもいけない。ナポレオンのテーマは荒鷲(あらわし)なので、少年時代は、いつか鷲(わし)になるであろう『小鷲(こわし)』をイメージして(笑い)。無口で知的で自尊心のある青年を作っています」

 立身出世、頂点を極め失脚、再起-。波乱に満ちた仏英雄だけに、さまざまな角度からナポレオンという人間が描かれる。柚希が最も参考にしたのは、「ベルサイユのばら」で知られる池田理代子氏が描いた漫画「栄光のナポレオン」のナポレオン像だった。

 「(身内を登用しすぎ)独裁者と最終的に言われていますけど、やっぱり私は(仏革命後、失われつつあった革命理念の)自由、平等、博愛を貫く国造りをしたかったのではないか、と。身近な人を斬ってしまう冷酷で野心的な人でもあり、身内に甘く、人を信じ過ぎる人でもあり…。結局、とっても人間的な人と思え、池田先生の漫画がぴったりきまして、けいこ中もずっと読み返していました」

 ナポレオンと自身の共通点も見つけた。皇帝とトップスター。人々を束ね、導いていく立場は同じだ。

 「皇帝の地位に居続ける苦しさ、孤独は、似ているとまでは言えないけど、どこか共通部分はあるかも。目標に向かって突き進むところ、達成のために無駄な経験は何もないというところは、私もそうありたいと思っています」

 柚希自身、ダイナミックなダンス、表情豊かなルックスで注目される一方、歌には苦手意識があった。それに真正面から取り組むことによって克服した。

 もっとも、立ち姿は対照的でもある。実際のナポレオンは小柄だったと言われるが、柚希は172センチの長身。「舞台では小柄って言葉は割愛! 出てきません」と笑う。そして、ナポレオンの代名詞、睡眠も…。

 「私、けいこ中でもたっぷり8~9時間は睡眠時間を確保しております。ベッドもフワフワにしてこだわっていまして。眠らない男ではないですね(笑い)。ナポレオン同様『3時間しか寝ずにけいこしてみよう』と思いましたが、実現しませんでした。あはは!」

 たくましい大人の男も演じられる宝塚の伝統的なトップも、素顔には少年のような無垢(むく)さも残す。「100周年のスタートは、200年、300年へ向かう挑戦。今、すごく『挑戦』という言葉が頭に浮かんでいます」。大人と子供が同居する力強く澄んだ瞳を輝かせ、柚希ナポレオンが100周年の先陣を切る。【村上久美子】

 ◆ル・スペクタクル・ミュージカル「眠らない男・ナポレオン-愛と栄光の涯(はて)に-」(作・演出=小池修一郎氏、作曲=ジェラール・プレスギュルヴィック氏) 仏皇帝ナポレオン・ボナパルトの栄光の軌跡を描く。その一方で、妻ジョセフィーヌ(夢咲ねね)との愛、葛藤も織り交ぜ、ジェラール氏独特の壮大なスケールの楽曲で表現する。

 ☆柚希礼音(ゆずき・れおん)6月11日、大阪市生まれ。99年、雪組公演「ノバ・ボサ・ノバ」で初舞台。星組配属。01年「ベルサイユのばら2001」新人公演でアンドレを演じ、注目。03年「王家に捧ぐ歌」新人公演に初主演し、以来、5作連続で新公主演。09年4月、星組トップ就任。12年「オーシャンズ11」では、第37回菊田一夫演劇賞を受賞。身長172センチ。愛称「ちえ」。

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