フジテレビ月9ドラマ「絶対零度」と、木曜劇場「グッド・ドクター」の視聴率が初回から2ケタの好調で推移していることついて、編成担当の石原隆取締役が7月27日の定例会見で語った言葉です。同局制作の2枠がそろって2ケタスタートとなったのは、16年7月期以来2年ぶり。ドラマ視聴率は局の勢いとステーションイメージに直結する本丸だけに、手応えに鼻息も荒いです。

 警察ものと医療ものという比較的数字に結びつきやすい手堅い題材であることに加え、このところの攻めの制作姿勢が効いてきたようにも感じます。

 木曜10時枠は、昨秋の「刑事ゆがみ」が各種ドラマ賞を獲得する見ごたえで枠の認知度アップに貢献。1月期の「隣の家族は青く見える」で不妊治療、4月期の「モンテ・クリスト伯」でフランス古典文学など、それぞれが作りたいものに向き合ってきました。どれも視聴率獲得には至りませんでしたが、見逃し配信や視聴者満足度調査など、視聴率以外の指標では高い支持を積み上げていたのは事実。月9初の詐欺師ものに挑戦した4月期の「コンフィデンスマンJP」も同様です。

 石原氏は「視聴率に反映されなくても、最近『フジのドラマおもしろいんじゃないの』という声をちらほら聞くようになった。制作陣もそういうお客さまの反応を皮膚感覚で感じている。自分たちがやってきたことは間違っていないと自信を持ちはじめた結果が、この7月期に反映されたと思う」。

 その自信を深めているのが、回を追うごとに視聴率が上がるという、これまでとは違う現象です。「絶対零度」は初回10・6%でスタートし、4話は11・7%で自己最高を更新。初回11・5%でスタートした「グッド・ドクター」も、3話は11・6%です。「世にも奇妙な物語」「古畑任三郎」などの看板ドラマを数々制作してきたヒットメーカーでもある石原氏は「最初は期待してもらったのに、内容を見てだんだんお客さんが離れてしまうという流れでなかったことがいちばんうれしい」と評価しています。

 ドラマ以外も、最近のフジテレビは明るい話題も出てきました。昨年から好調の「バイキング」が、6月第2週(平均5・9%)と第3週(同6・2%)でTBS「ひるおび!」を抜いて2週連続民放横並びトップとなったほか、「直撃LIVEグッディ!」も5月23日の放送で5・6%をマークし、初めて同時間帯トップを体験しています。宮内正喜社長は5月の定例会見で「デイタイムの勢いをゴールデンとプライムにつなげたい」と切望していましたが、その思いが今回の連ドラ好調で果たされた形です。

 局内も、微妙に元気が出てきた印象。コンテンツ以外でも、地に足つけて変えるところは変えるという雰囲気が本格化してきました。今回の定例会見で記者の間でちょっと話題になったのが、同局が毎年1月と7月の定例会見の会場にしてきた新宿区のホテルを変えたことです。

 12年連続視聴率3冠王(82年~93年)だった河田町時代、このホテルで編成会議をするといい結果が出るというジンクスがありました。11年に日テレに3冠王を明け渡し、テレ朝にもTBSにも抜かれて民放4位に沈んだ15年以降もずっとジンクス再来を夢見て変えずにきたのですが、今回「取材各社の利便性を考えて」(広報)という理由で千代田区のホテルに変更。各社にとっては圧倒的に会場が近くなり、記者の数も増えて盛況でした。

 中身も少々変わりました。民放の7月定例会見は、共催する記者会との懇親パーティーがあるのですが、今回は会場に新人アナウンサー4人が自己紹介に訪れました。新人女子アナの冠番組を発表して撮影タイム、みたいないつものイベント化はなし。みんな黙々と名刺交換に励んでいて、逆にやる気が伝わってきました。

 来年は開局60周年という社内をまとめる追い風もあり、脱低迷にいよいよ本腰を入れてきそうです。今回のドラマ好調はまたとない好機で、ある幹部は「何年低迷していようと、1個高視聴率が出ただけでワーッと気分が変わっちゃうのがテレビマンというもの。この流れを大切にしたい」。TBSは3年前の60周年、テレビ東京は4年前の50周年を機に今の好調につなげています。次はフジテレビの番となるのか注目です。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)