大みそかの紅白歌合戦の余韻も一息ついた。サザン&ユーミンや米津玄師のような大ネタはひとまず置き、舞台裏のほっこりした小ネタを10個ばかり選んでみた。

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NHK紅白歌合戦の出演者としてリハーサルに参加するチコちゃん
NHK紅白歌合戦の出演者としてリハーサルに参加するチコちゃん

◆チコちゃん大人気

人気のチコちゃん(5さい)は、リハでも歌手たちのアイドル的存在。スタッフと手をつないで進行スペースに登場すると、隣同士になった関ジャニ∞からペタペタと歓迎されていた。全体リハは立ち位置がAKB48と乃木坂46の間で、握手したりお辞儀したりとかわいい交流も。リハ中は常に身ぶりをして手抜きが一切なく、ダンスも上手。注目の的だった。

◆リハ用のクイズも用意

「チコちゃんに叱られる!」のクイズ場面のリハでは、チコちゃんの立ち位置とCG班の連携を主に確認。本番で出題された「なんで紅白歌合戦は紅白なの?」に代わり、リハ用にチコちゃんが出題したのは「曲で一番盛り上がるところをなんでサビって言うの?」。「ワサビ」がらみの答えを関ジャニ村上信五がうっかり正解してしまったが、「ボーッと生きてんじゃねえよ!」のCGは大成功。ちなみに、岡村隆史と木村祐一の控室は本館エレベーターの真ん前だった。

NHK紅白歌合戦の出演者としてリハーサルに参加するチコちゃん
NHK紅白歌合戦の出演者としてリハーサルに参加するチコちゃん

◆キンプリのステージを見守る櫻井翔と松本潤

King&Princeのリハは、櫻井翔と松本潤の2人が進行エリアで見守る流れだったが、見守り方に個性の違いがあってほほ笑ましいひととき。櫻井は、体全体でリズムをとって、曲とステージを楽しんでいる感じ。一方の松本は微動だにせずステージを凝視し、キンプリが最後のポーズをキメた瞬間、とびきりの笑顔で拍手を送った。嵐のコンサートの演出も手掛ける松潤。始めから終わりまでをトータルで見る演出家気質が垣間見えた。

舞台袖で、「U.S.A」の舞台セットをスマホで記念撮影するDA PUMPのISSA(中央)
舞台袖で、「U.S.A」の舞台セットをスマホで記念撮影するDA PUMPのISSA(中央)

◆ISSAはセットの写真をパチリ

DA PUMPのISSAは、音合わせを終えると、ステージいっぱいに電飾された「U.S.A」の舞台セットを何度も見上げていた。撤収作業のじゃまにならない隅っこまで来ると、スマホを受け取ってセットをパチリ。16年ぶりの紅白がどれだけうれしかったかが伝わってきた。翌日の全体リハでは、音準備が整うまでの間、ステージ上で地声で発声練習。メンバーたちも、ヒザ上げ、股割り、アキレス腱(けん)伸ばし。待ち時間の過ごし方も見ごたえがあった。

◆取材陣も「けん玉」に気が気でない

「いごっそ魂」の歌唱中にけん玉のギネス世界記録となる124人連続成功に挑んだ三山ひろし。リハで成功すると、取材陣から自然と拍手が起こった。前年失敗した「14番」さんは、今回はラッキーセブンの7番手で再挑戦。124人のプレッシャーを思うと、取材陣も「ぶっちゃけ歌どころじゃない」と祈るような気持ちで、ロビーではライバル紙同士が「成功しました?」と情報交換。重圧を乗り越え、本番も見事に成功。本当におめでとうございます。

第69回紅白歌合戦の企画コーナーのリハーサルを行った刀剣男士
第69回紅白歌合戦の企画コーナーのリハーサルを行った刀剣男士

◆定番質問でいちばんウケていた刀剣男士

囲み取材で定番化している「今年1年を漢字一文字で」の質問。答えも無個性に陥りがちな中、刀剣男士の三日月宗近は「まあ、『刀』ですな」。お見事な斬り口に場が爆笑となった。“恒例の一句”をリクエストされた和泉守兼定がフリーズすると、メンバーが「考えていなかったようだ」と涼しくフォローしたのもなごむ。「紅白で 伝説残すぞ 全員で」というややウケの一句に不思議な好感度。「よく知らなかったがファンになった」という記者が続出。

◆三浦大知の囲み取材力

ロビーでの囲み取材は、歌手が階段の3段目あたりに立ち、取材陣が下に集まる形で行われる。中のリハに影響しないよう、騒々しい場所でマイクなし。後方に陣取るとほとんど聞こえなかったりするのだが、三浦大知の囲みは「今年もよく聞こえる」と取材者を感動させた。決して大きな声ではないが、最後列と、その向こうにいる全国のファンをきちんと意識して話すので届くのだ。ISSAやYOSHIKIなど、こういうタイプの人は声の大小にかかわらず声がよく聞こえて、取材者から一目も二目も置かれる。

第69回紅白歌合戦のリハーサルで入館証を提げて歌う郷ひろみ
第69回紅白歌合戦のリハーサルで入館証を提げて歌う郷ひろみ

◆郷ひろみはリハでも首に入館証

以前、警備員に「ちゃんと首から下げて」と止められたことがあったそうで「それ以来毎年下げています。言われたことはちゃんとやるA型です」とにっこり。郷さんの歌唱は、エントランス→ロビー→ホール内を歌いながら移動するハードな演出。カメラワークの確認のため、通しで3回行われたが、肩で息をしながらも、本番の掛け声がかかるとビシッときめる。

◆その場で覚える嵐のスキル

嵐は、音合わせのその場で紅白仕様の振り付けとフォーメーションを一から覚える作業。振り付け担当者の指示を受け、カウントを数えながら個々に動きと立ち位置を確認していった。5分くらいで「それでは音を出します」(舞台監督)と音楽が流れると、一発でピタリ。2曲のメドレーで両翼ステージに分かれたり中央に集まったりと段取りはたくさんあったが、難なくこなしていて10年連続出場のスキルを感じる。

◆ADも舞台監督も黒スーツ

ホール内のカメラは、ざっと見ただけでも、ステージ前に4台、客席後方に6台、クレーンカメラ1台、2階席に1台。ステージ上を動き回るステディカムや、数台の手持ちカメラ、副音声席の固定カメラなど全部で何台あるんだか。進行台本は電話帳並みの分厚さ。総スタッフは3000人以上にのぼり、常にフロアにいる数十人はADから舞台監督まで全員白シャツ&黒スーツ着用の伝統。ちょっと民放ではあり得ない光景がいかにも紅白で、番組責任者は「スタッフがいとおしい」と涙目のあいさつだった。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)