「3年A組-今から皆さんは、人質です-」の最終回視聴率が15・4%を記録し、ドラマ復調の兆しを見せている日本テレビが、4月期ドラマの主要枠すべてにオリジナル作品を編成する勝負に出ている(深夜枠は除く)。連ドラの平均視聴率が全作1ケタだった昨年の反省を踏まえ、「ゼロから物語を作り出す胆力」と「結末が分からない強み」で世間をざわつかせたいという。

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日本テレビ水曜ドラマ「白衣の戦士!」(C)NTV
日本テレビ水曜ドラマ「白衣の戦士!」(C)NTV

日本テレビ4月期の主要ドラマ枠は、読売テレビ制作の木曜ドラマF枠を含めて以下の通り。すべてオリジナルのラインアップだ。

◆水曜ドラマ「白衣の戦士!」(4月10日スタート、水曜午後10時)主演中条あやみ、水川あさみ、脚本梅田みか

◆木曜ドラマF「向かいのバスる家族」(4月4日スタート、木曜午後11時59分)主演内田理央、脚本マギー

◆土曜ドラマ「俺のスカート、どこ行った?」(4月20日スタート、土曜午後10時)主演古田新太、脚本櫻井智也、池田健司

◆日曜ドラマ「あなたの番です」(4月14日スタート、日曜午後10時半)主演原田知世、田中圭、企画秋元康、脚本福原充則

TBSとフジテレビが主要3枠すべて原作もの、テレビ朝日はシリーズものであるだけに、日テレのオリジナル編成はかなり目立つ。

情報・制作局担当局次長の福士睦さんは「原作ものやリメークものを捨てているわけではないのですが、やはり最も注力すべきはオリジナルだと思っている。ドラマは局のカラーがいちばん出やすいところ。責任をもってやっていきたいという意気込みがこういう形になった」と話す。

日本テレビ土曜ドラマ「俺のスカート、どこ行った?」(C)NTV
日本テレビ土曜ドラマ「俺のスカート、どこ行った?」(C)NTV

オリジナルドラマの利点について、「結末が分からない面白さ」と「制作力の向上」の2点を挙げている。

「結末が分からないのはオリジナルの大きな強み。巻き込まれるといい中毒性が生まれ、世間がざわついて盛り上がっていく。地上波の強みを実感できるところです」。先が読めない作品性で冬ドラマ界の話題をさらった「3年A組」の成功で、その思いを新たにしている。制作力の維持、向上の面からも「やりたい企画を脚本家さんと形にし、それが反響を得た時のドキドキ感や胆力は制作者にとって今後の糧になる。ゼロから1を作り出すのが最も大変で、最も面白いところ。その意識を若手のプロデューサーたちが共有している」と話す。

主要3枠の全作が平均1ケタで終わった昨年の絶不調と比べると見違える。流れを変えるきっかけとなったのは、10月期に日曜ドラマ枠で放送された「今日から俺は!!」(主演賀来賢人、脚本演出福田雄一)だ。全話平均は2ケタに届かなかったが、マンガ原作の世界観を実写で実現したミラクルがSNS上で話題となり、最終回視聴率は12・6%を記録。Hulu週間視聴UU歴代1位、TVer日テレ最終回見逃し再生最高記録(195万再生)、ツイッター、インスタグラムのフォロワー数日テレドラマ歴代1位など大きな反響があった。同局が重視する13歳~49歳の若いコアターゲット層に刺さったことも自信につながった。

日本テレビ日曜ドラマ「あなたの番です」(C)NTV
日本テレビ日曜ドラマ「あなたの番です」(C)NTV

勢いは「3年A組」で本格化し、視聴率は全話平均11・5%、最終回は15・4%を記録した。若者層をがっちりつかみ、あらゆる年齢層を上積みしての15%超えはやはり迫力がある。動画配信などマルチメディア展開も「今日俺」の記録をさらに塗り替えた。2クール連続の成功に、定例会見も「若い人と親御さんがセットでリアルタイムで見てくれるという自信をつけた2作品で、手応えがあった」(福田博之編成局長)と表情が明るい。ちなみに水曜ドラマ「家売るオンナの逆襲」も全話平均11・5%で、3枠中2枠が平均2ケタ超えとなっている。

福士さんによれば「見ていただくための入り口を分かりやすくするため、企画を含めた意識改革を昨年から進めてきた」という取り組みの結果でもある。水曜は女性層向けの「ハピネス」、土曜は「スリリング」、日曜は「サプライズ」と枠のコンセプトを明確にし、4月クールはそれぞれ、痛快ナースコメディー、異色教師もの、交換殺人ミステリーのラインアップとした。「リアルタイムで見たいという面白さをオリジナルで提供したい」と意気込んでいる。

ひとつ当たると勢いが出るのがテレビ局。どう世の中の空気をとらえ、どんな投球フォームで、どんな球を投げるのか。オリジナルドラマの自由な挑戦に注目したい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)