3密を避ける“新たな生活様式”の中、映画、ドラマの撮影が続々と再開している。明るい話題であるものの、地方ロケの困難やキスシーンの一発撮り、設定変更による台本の書き直しなど、現場は大混乱だ。「予算担当者がストレスでじんましん」などの悲鳴も聞こえてくる。

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どの作品も急ピッチで進められているのが、台本の書き直しだ。3密を避けるため、室内に大勢人がいるシーンなどは、人数を絞って書き直したり、カット割りや合成、別撮りなどの低リスクな撮影に切り替えられている。設定の変更は季節にまで及び、ある映画関係者は「秋冬の設定のストーリーだったが、これから撮影すると風景が夏。季節を変更して進めるべく作業している」と語る。

濃厚接触が避けられないラブストーリーやアクションものは、密のシーンを極力控えた形に変更されることになりそうだ。

制作会社スタッフは「特にキスシーンは神経を使う。リハーサルまではマスクをして行い、キスは本番のみが基本。役者さんは一発撮りのプレッシャーが増す一方、健康第一で『キスシーンはできれば避けたい』という事務所もあるなど、いろいろです」。そもそも、業界団体や映画会社、テレビ局など、各社が定めるガイドラインにかなり温度差があるとし、「リハはマスクでOKというところも、フェースガードというところもある」。

3密のスタジオ撮影はできるだけ避けたいが、外ロケもかなり大変そうだ。「どんなに減らしても、スタッフ、出演者、それぞれのマネジャーやヘアメークなど50人では済まない人数がどっと来るので、ロケさせてもらえる建物を探すのもひと苦労」。前出の映画関係者は「映画の場合は地方にオープンセットを組んでいる作品も多い。『東京から大勢で菌を持ち込まないでほしい』という地元の人の心配も寄せられ、肩身が狭いという声も聞く」という。

関係者が口をそろえるのが「いつまた中断するか分からない」という不安だ。「密を避けるガイドラインのもと、撮影時間も短くなっており、一発勝負でどんどん撮っていくのが最優先です」。売れっ子ほど次の作品のスケジュールが詰まっており、簡単に玉突きできない事情がある。ドラマスタッフは「主要キャストの都合で、残り全部を1カ月で撮らなければならない作品もある」とし「設定の変更によるロケ地探しやロケバスの手配など、やることは山ほどあり、日々の予算交渉でじんましんが出た人もいる」。

ガイドラインはあっても、その先の考え方はプロデューサーによってまちまち。前出の制作会社スタッフは「身の危険を感じたら降りてもいいという責任者もいるが、仕事や役がよそにとられるのは本意ではなく、降りるという選択肢はほぼない。でも、この業界の人はみんな現場が好きで、みんな撮りたいんですよ。再開できた今は、苦労より喜びの方が大きいです」。

戦隊ドラマや主要枠の連ドラなど、6月末からの始動の発表も相次いでいる。奮闘の中、どんな作品がお披露目されるのか、2カ月遅れの春ドラマを楽しみに待ちたい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)