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下坂美織と囲碁しちゃおっ

姫の世界 美織ワールド

気抜けぬ記録係ですがドラマチックな時間過ごせます

タイトル戦に同行したときに、歴史ある碁盤でパチリ記念撮影しちゃいました
タイトル戦に同行したときに、歴史ある碁盤でパチリ記念撮影しちゃいました

<第9回・目の前の熱戦「コワい!」>

 対局者の側で紙に何かを書き込んでいる人。テレビなどでご覧になったことがあるでしょうか? タイトル戦などの大きな対局には必ずつく、「記録係」という人たちです。今回は、普段はあまり目に留まらないであろう記録係についてご紹介したいと思います。

 記録係のお仕事は主に3つあります。

 ①棋譜付け(碁罫紙4枚に記入)

 ②時間付け(○手目が何分の考慮時間で打たれたのか、打たれた時刻、合計の消費時間を記入)

 ③秒読み、です。

 それに加えて、両対局者の消費時間をいつでも答えられるようにしておく必要があります。対局者から急に「あと何分?」と残り時間を聞かれることがあるので気が抜けません。意外にもやることはたくさんあります。

 私ももちろん記録係をしたことがありますよ。上記の仕事をこなすと同時に「次に対局者はどこに打つのだろう」と自分なりに予想するのが楽しいです。トップ棋士と同じ時間に同じ場面を考えられるので勉強にもなります。ただ、あまり熱心に考えすぎると肝心の記録の仕事にも支障が出ますので、対局者の表情を観察したりもしますね。

 前に一度、2日制のタイトル戦の記録係をしたときのことでした。対局は2日目の夕方、一番の勝負所を迎えたときでした。形勢が傾きかけていて、形勢不利と思われる先生の手番でした。

 その先生、なかなか碁石を持とうとしない。10分、30分、時間が刻々と過ぎていきます。私にはどのように挽回して良いか見当がつかなかったので、対局者の先生の顔を窺ってみました。

 するとその先生、なんと鬼気迫る表情だったことか! 顔は紅潮し、盤を睨む目つきがあまりに鋭い。盤側にいても(コワい!)と思うような迫力でした。私が相手だったら、ひるんでしまいそう。同様に驚いたのが、その気迫に相対する対局者が平然と構えているところですね。これが超一流の勝負なのだ、と肌で感じました。

 結局のところ、1時間の長考の末に放たれた勝負手が成功し、見事に逆転。これぞ勝利への執念、まざまざと見せつけられました。

 また、「ボヤキ」というのも面白いですよ。「うーん、わからないなぁ」「参った参った」。対局中に、いろんな言葉が飛び交います。これらは誰に話しかけているでもなく、単なる独り言です。そのほとんどが無意識に発されているようですね。しかも、この「参った」というのが当てにならない。一説によると、自分が参ったのではなく、相手が参ったからそうボヤくのだとか(笑…)。真偽のほどは不明です。

 このように記録係をやっているといろいろなドラマに遭遇します。面白いお仕事なのですよ。

[2014年2月18日10時16分]

左側がまっさらな碁罫紙です。右側のように終局場面まで記入すると真っ黒になります
左側がまっさらな碁罫紙です。右側のように終局場面まで記入すると真っ黒になります








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