30歳の小柄な日本人女性が、ローマ法王やロシアのプーチン大統領らと肩を並べた。米タイム誌「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんだ。「人生がときめく片づけの魔法」(サンマーク出版)は、発売5年間で世界31カ国で出版された。米国では「Kondo」が近藤流片づけの動詞にもなっている。

 日本からの選出は、ノーベル賞候補の常連でもある作家村上春樹氏(66)と2人だけだった。

 「なぜ、この人が? と疑問に思われている人がほとんどでしょう。欧米の方には、捨てる時に『ありがとう』という感謝の気持ちを込めるところに日本的なものを感じていただいたようです」

 近藤さんの片づけ法の特徴は、取捨選択の基準に「ときめくか、そうでないか」を据えたところだ。

 タイム誌の選出に合わせて訪れた米国では、昨年10月に出版した著書「人生がときめく片づけの魔法」が67万部のベストセラーになっている。ニューヨークの大型書店でのイベントも店内が埋まる盛況となった。

 「英訳すると『ときめき』は『Spark Joy』。そんな気持ちでお片づけをした自閉症のお子さんが、それをきっかけにお話しするようになった。お母さんが大喜びで。私の本から感じていただけるものは日本と同じなんですね」

 その片づけ術は、心に訴えるとともに実践的でもある。衣類、書籍の順にいったん1カ所に積み上げ、これを取捨選択後に処分し、整頓する。

 「衣類はかさがあるからビフォー、アフターが実感しやすい。ときめきの基準があるからリバウンドもないんです」

 自らを「片づけのヘンタイ」というだけあって、5歳の時から母親が購読していた「オレンジページ」や「ESSE」といった主婦雑誌に目を通しながら「収納方法」を模索するようになる。中3で辰巳渚さんの「捨てる! 技術」を読んで「捨てることに目覚めた」という。しかし、はまりすぎて片づけノイローゼに陥ってしまったという。

 「高校に入ってから、ようやく『残す』ことも考えられるようになりました。『ときめき』の原点はその頃かも知れません」

 大学進学後、周囲に1人暮らしの友人が増え、片づけを手伝っているうちに口コミで「顧客」が増えた。就職先のリクルートエージェントでは人材紹介の法人営業をしていたが、副業の「片づけ」依頼は増え続けた。2年で退社し、片づけ一本に絞った。

 5年前に出版した「人生がときめく片づけの魔法」はシリーズ累計200万部を超える。

 「ものが簡単に手に入る先進国の方が『片づけ後進国』になりやすい。アメリカ、イタリア…。私の本が売れている国でもあります。ドイツは国民性もあるのでしょうが、片づけレベルは高いです。そのドイツでも、捨てるものに『ありがとうございます』と伝えるところには驚くんですね」

 「おもてなし」に続いて日本流「感謝の気持ち」が近藤さんによって世界に広められている。【相原斎】

 ◆近藤麻理恵(こんどう・まりえ)東京都生まれ。5歳の時から母親が購読していた「オレンジページ」「ESSE」などを愛読。小学生時代は整理整頓係。07年に東京女子大を卒業。卒論は「ジェンダーの視点から見た掃除/片付け」。リクルートエージェントに2年間勤務後、本格的に片付けコンサルタントに。1年前に結婚。愛称「こんまり」。