俳優渡辺謙(55)が、来秋公開の映画「怒り」(李相日監督)で主演を務めることが19日、分かった。吉田修一氏原作人気ミステリーの映画化作品に、NHK大河ドラマ主演経験者が渡辺含め4人出演するなど、日本を代表する豪華キャストが集結。国内のみならず、世界に向けて発信する。

 米ブロードウェーでミュージカル「王様と私」に主演し、米演劇界最高の栄誉とされる今年のトニー賞で、ミュージカル部門主演男優賞候補に選出された渡辺の、2013年「許されざる者」以来の日本映画主演が決まった。演技指導に厳しい李監督と同作に続くタッグに「お手柔らかに。無理だと思いますけど」とコメントしつつ、「人を信じるということが、こんなにも難しく、もろいものなのかという、今回もハードな話。心してかかっていきたいと思っています」と気合を入れている。

 同作は、原作が上下巻合わせて16万部を超えるヒット作品。東京・八王子で起こった夫婦惨殺事件から1年後の夏、殺害現場に血文字「怒」を残した犯人は、整形手術をして逃亡を続ける中、千葉、東京、沖縄にそれぞれ前歴不詳の男3人が現れる。同時に3つのストーリーが進行する中、真犯人は誰なのか? というミステリー作。渡辺は、千葉の漁港で働く漁業組合の職員役で、王様とは真逆の、髪を伸ばしっぱなし、無精ひげも生やした“普通の男性”を演じる。

 10年公開で、同年の映画賞を総なめにした「悪人」の吉田氏、李監督、東宝・川村元気プロデューサーのトリオが再集結した。13年末に3人で会食した際に今回の映画化の話が進んだ。吉田氏からも、日本を代表する実力派をそろえた“オールスターキャスト”の要望があったといい、渡辺を筆頭に妻夫木聡(34)松山ケンイチ(30)宮崎あおい(29)と大河ドラマ主演経験の4人をはじめ、森山未来(31)綾野剛(33)ピエール瀧(48)らの実力派に、高畑充希(23)、オーディションで選出の広瀬すず(17)と若手注目株まで、豪華キャストが集結した。

 川村プロデューサーは「これだけの俳優さんに集まっていただいた。国内の映画賞ももちろんうれしいですけど、世界の作品賞を狙っていきたい」と、ベネチアやモントリオールなど国際映画祭での受賞を狙う姿勢を明かした。

 ◆「怒り」 02年「パーク・ライフ」で芥川賞を受賞した吉田修一氏が、12年10月~13年10月まで新聞連載で発表。14年1月に中央公論社から単行本化された。吉田氏は映画化に「これ以上ないスタッフ・キャストで映画化となる。期待という言葉では到底足りない思いで傑作の完成を待っています」とコメント。