歌舞伎俳優松本幸四郎(45)が23日、歌舞伎座で、高麗屋3代の襲名披露興行「二月大歌舞伎」(1日初日、東京・歌舞伎座)の祝幕(いわいまく)のデザインを発表した。前衛芸術家の草間弥生氏(88)の絵画が用いられる。草間氏の絵画が大きな幕になるのは初めてという。

 昨年制作された3枚の絵画が、1枚の幕にデザインされた。テーマは「愛を持って人生を語ろう」。祝幕では異例の、黒地に鮮烈な色彩。幸四郎はもともと草間氏の作品のファンで、昨年6月にアトリエを訪ねてデザインが決まった。草間氏が「どの作品でも」と言ってくれたという。幸四郎は「(代表される)かぼちゃもドットも大好きですが、すごく新しさを感じました。先生の作品をエネルギーにしたい」と話した。

 父松本白鸚(75)の反応について、幸四郎は「驚いておりました。すかさず『照明の当て方をどうするかだね』と言ってました。父の元気な証拠だと思います。これが掛かる時にはいろんな手間がかかると思います」と、苦笑いしていた。 草間氏は「このたびの襲名の素晴らしさに世界中の人々が心を打たれております。これからのあなたに人生のすべてを開拓してゆくことを心からお祝いいたします」とコメントを寄せた。

 高麗屋3代の襲名興行は1、2月と連続で行われる。幸四郎は「二月大歌舞伎」では昼の部「一條大蔵譚」で一條大蔵卿を、夜の部「熊谷陣屋」で熊谷次郎直実をつとめる。幸四郎は「1度にこの2つを演じるなんて無謀だと思っていますが、一生に1度しかない、これ以上のスケールのことはない興行なので、後々『あの襲名興行は大変だったね』と思うことができるほどの大変な思いをしたい」と語った。

 祝幕は襲名披露など特別な興行の時に、後援会やひいき筋から贈られる幕。