昨夏から秋元康氏がテレビ朝日系でスタートさせたオーディション番組から生まれた女性アイドルグループ「ラストアイドル」の初単独コンサートを取材した。結論からいうと非常におもしろい存在だった。我々スポーツ紙のアンテナが反応する、活字向きのタレントだからだ。

 活字向きとは何か? それは、彼女たちのことを文章で読むと、より感情移入ができる背景や物語を持っているということ。

 本来のアイドルとは、ビジュアルを楽しむ、愛でるのが大前提だと思う。実際に、アイドルは、ひたすらかわいければいいという人も多いはず。ファンになるきっかけが、好みのタイプだったからというのも、いたって普通の感覚だ。

 ただ、その先にもさらなる興味を引き続けるためには、その子の人生を知ることができた方がいい。そこに「苦労」や「努力」が秘められていたとなると、応援する気持ちが増してくる。そんな物語を語る要素が、このラストアイドルには、多分にあるのだ。

 たとえば、今の平昌冬季五輪の女子スピードスケート銀・銅メダリスト高木美帆なら、4年前の代表落選からはい上がってきた半生に、人はより胸を打たれて、祝福の気持ちを増させた。女子スキージャンプ高梨沙羅も、我々が4年前の惨敗を知るからこそ、より熱く応援できた。そんな彼女たちのドラマは、知られざる秘話が書き込まれた翌朝のスポーツ紙の記事でより詳しく知ることで、さらに感動が増す。

 ラストアイドルの彼女たちも、そんな人の胸を熱くさせる物語を持っているのだ。

 もちろん、男子スノーボード平野歩夢のように、命にかかわるほどの大けがをして、そんなどん底から復活してのメダル獲得ほどに、すさまじい物語を備えているとは言えない。

 でも、この日のライブの姿を見ると、彼女たちが今ある青春のすべてをかけて、ステージに立っていることが、言葉がなくても自然と伝わってきた。それは、気迫といってもいいオーラだった。

 彼女たちは、テレビ番組で毎回、自分のアイドル人生をかけて勝負に挑んでいる。勝ち残った子にも、敗れた子にも、その真剣な生きざまからドラマが生まれている。その汗と涙を知るからこそ、観客の声援は熱狂的だった。

 秋元康、小室哲哉、織田哲郎、つんく♂、指原莉乃の5人の一流プロデューサーが、それぞれ1グループずつを担当しているという特徴もおもしろい。

 今後、より各プロデューサーの特色が、彼女たちに植え付けられていき、アヒルが白鳥に生まれ変わっていくだろう。その成長物語を目撃し続けるのは、おもしろいし、感動するはず。日刊スポーツでは、その経過を記事で、定期的に継続して追い続けてみたいと、思わせられた。きっと、予想も付かない展開になっていくだろう。

 どんな形で読者やユーザーの皆さんにお届けできるか、これから吟味していこう。久々に、取材意欲を駆られた対象だった。