おっさん同士の純愛を描き、話題のテレビ朝日系「おっさんずラブ」(土曜午後11時15分)。貴島彩理プロデューサー(28)に制作の裏側を聞く第2回はLGBT、セクハラやパワハラなど昨今、議論される問題も盛り込んだ作品に込められた、現代日本に投げかけたい思いを聞いた。

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 「おっさんずラブ」は、天空不動産の営業所を舞台に、女好きながらモテない33歳の春田創一(田中圭)が、上司の黒澤武蔵部長(吉田鋼太郎)と後輩の牧凌太(林遣都)に好きだとカミングアウトされ、恋愛、結婚、仕事に戸惑い、苦悩する純愛ラブストーリーだ。貴島プロデューサーは「今の結婚できない男女、働く男女の恋愛を切り取る」ことが大きなテーマだったと語るが、物語にはLGBTやパワハラ、セクハラなど現代の日本において議論されているテーマが幾つもちりばめられている。

 -LGBTなども理解されてきているとはいえ、チャレンジングな企画

 貴島P 自分の中で、そんなにチャレンジングだと思っていなかったのが大きかったのかもしれないですね。好きじゃない人から迫られる…パワハラやセクハラとかでもあると思うんですけど。友人や本当に尊敬する上司から告白されて、それが同性だった時に思うことって、やっぱり「嫌だ」とか「気持ち悪い」というより、「困る」とか「人として好きだからこそ、どうしていいか分からない」ということ。それが大事なのかなと思っていて。

 -人として好き、尊敬しているのに恋愛感情を持たれたら困るのは、男女関係でも同じ

 貴島P 黒澤の春田へのアプローチもそうですが、片思いして本当に好きな時って、突っ走って付き合った気分になっていたり、誰でもあるじゃないですか? 好きだから気持ちはうれしいけれど(恋愛とは)違うのは男女でも世の中にたくさんあると思うんです。

 -社内恋愛の面倒くささも描かれている

 貴島P 社内恋愛が面倒くさいというのもやりたくて。社内恋愛は、一緒にいるからいいところも見えるし、カミングアウトがどうのとか気まずいとかも起こるし。私たちの仕事もそうですけど、家族より職場にいる時間の方が長いじゃないですか? その中で好きになっていくというのが、ある意味リアル。もちろん、飲み会で出会う方もいるとは思いますけど、働く男女がこれだけ増えたら、社内恋愛はキャッチーなテーマだと思います。作っていてどうなんだろう? って思った時は、男女でもこういうことってあるよねというところに立ち返って作るようにはしています。

 -春田と幼なじみのちず(内田理央)も、互いの思いに気付いて動き始めた

 貴島P 現代の働いている男女同士の結婚は、都合のいい相手を結婚相手として探しがちです。どちらかが妥協できるか…家事するよって言えば、例えば春田とちずも1話で結ばれていると思うんです。そうならないのは、やっぱりどっちも好きなんだけど、理想ではないから足踏みしている。その間にまさかの(ちずが春田を)男のライバルに奪われていく…というのは面白い。幼なじみや仲のいい友達もそうですけど、失って初めて大切さに気付くもの。ずっと一緒にいられると思っていて、ライバルが現れて初めて、やっと好きだと気付いた時には遅い…ちずには、これから頑張って欲しいと思っています(笑い)

 -今の社会における問題を、まんべんなく際どいところまで攻めているドラマ

 貴島P 一歩間違えると…というところはあるけれど、間違えないように、というのは気を付けて作っているところかも知れないですね。でも「王道恋愛ドラマでしょ」っていうのが1番ですね。好きな気持ちに真っすぐな結果、こうなったということが大事なわけで。このドラマに出てくる人には、悪い人がいないし、みんな応援したくなる。私は、みんなが救われるハッピーになるドラマが好きなんですけど、いい人が救われる世の中だったらいいなと思って作っています。今は頑張っている人が、バカにされる世の中だったりするじゃないですか? ドラマの中くらいは、頑張って真っすぐで素直な人が損しない、ちゃんと幸せになれるように…というのはキャラクター作りで大事にしているところですね。頑張ることは格好悪いという世の中でもあるんですけど、バカみたいに真っすぐ生きるキャラクターが幸せになり応援される世の中であって欲しいと思っています。

 -登場人物はは今、みんな問題を抱えている

 貴島P 大丈夫です! いろいろ幸せの形があると思うんですけど、ちゃんとみんな笑えるラストにしてあげたいと思っています。

 明日の最終回は、ドラマプロデューサー3年目の貴島プロデューサーが考えるドラマ、これからのテレビとエンタメについて、そして意外なルーツについて語る。【村上幸将】