約300万円と低予算で製作され、東京都内の劇場2館から公開がスタートしたインディーズ映画「カメラを止めるな!」(上田慎一郎監督)が、北海道から鹿児島まで全国124館の劇場に公開が拡大されることを記念して3日、東京・TOHOシネマズ日比谷で御礼舞台あいさつが行われた。

 この日の舞台あいさつは500席が発売後、3分で完売した。満席の客席で、観客とともに上映を見た上田慎一郎監督(34)は「こんな大きなところで上映されるなんて…でも、どこかで映画の力を信じていた」と、やや声を詰まらせながら語った。

 劇中で監督の日暮隆之を演じた濱津隆之(36)は「こんな大きいところで、映るなんて、撮影した1年前には1ミリも思わなかった」と興奮気味に語った。日暮の娘・真央を演じた真魚(26)は「こんなに大きなスクリーンで映りたいと役者になった時から思っていて…不思議な気持ちでした」と驚きを口にした。また妻の晴美を演じた、しゅはまはるみ(43)は「こんな大きいスクリーンで、エキストラの役者の顔まで映って、みんなで作ったんだと思って涙が出た。本当に感謝しかありません」と涙した。

 カメラ助手の松浦早希を演じた浅森咲希奈(23)は、感極まり「シンデレラになったような気分。夢がかなって…死んじゃったら、どうしようと思った」と涙声で口にした。そして「でも1つ、悔しいのが無名、無名と書かれたこと…いつか、ここに立てるように頑張ります」と女優としての意地も見せた。

 劇中で松本逢花を演じた秋山ゆずき(25)は「こんなにたくさんの人を見たことがない。私の思っていた未来より羽ばたいた。驚きでいっぱい。これを機にブレークしたい」と興奮気味に語った。そして劇中の名ぜりふ「よろしくで~す!!」と言い、笑った。

 「カメラを止めるな!」は、新人監督と俳優を養成するスクール「ENBUゼミナール」の映画企画第7弾。上田監督が、13年に小劇団の舞台に着想を受けて発案した企画を元に、17年4月にオーディションでメインキャスト12人の俳優を選び、映画の製作を前提としたワークショップを開催。上田監督が12人の俳優を当て書きする形で登場人物を描いた脚本を書き、その直しとリハーサルを繰り返し俳優とともに作り上げた。製作費は、ワークショップに参加した俳優の受講料とクラウドファウンディングで集めた150万円強などを含めた、約300万円と低予算で製作された。

 17年11月に新宿K’sシネマで6日間限定で行われたイベント上映を行った。それがSNSなどの口コミで話題を呼んだ。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でゆうばりファンタランド大賞(観客賞)、イタリア・ウディネ・ファーイースト映画祭シルバーマルベリー観客賞2位など、国内外の各映画祭で評価されたこともあって口コミがさらに広がり、6月23日から同劇場と池袋シネマ・ロサでの公開につながった。

 公開館が少ないこともあり“最も見ることが難しいと言っても過言ではない映画”とSNSを中心に話題が沸騰。アスミック・エースがENBUゼミナールとの共同配給に乗り出し、TOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズ日比谷など全国40館の劇場で拡大上映されることが7月25日に発表された。

 3日の段階で全国7館で公開が始まり、公開館数は14に増え、約6万7000人を動員している。翌4日にも2館増えるといい、現状、今後は全国で124館の公開が決まった

 この日は長屋和彰(30)細井学(59)市原洋(32)山崎俊太郎(32)大沢真一郎(41)竹原芳子(58)吉田美紀(36)合田純奈(24)山口友和(40)藤村拓矢(30)曽我真臣(35)佐渡未来(35)も登壇した。【村上幸将】