幻冬舎の代表取締役社長の見城徹氏(68)が、自社から出版した作品の実売部数を明かすなどしたことに対し、作家らから怒りの声が噴出している。

見城氏は16日、ツイッターを更新。作家の津原泰水氏が同社から出版されている「日本国紀」(百田尚樹著)の著作権侵害を指摘したことで、予定されていた自著の文庫化が白紙になったと告発した問題に言及し、「こちらからは文庫化停止は1度も申し上げておりません。担当者はずっと沈黙していましたが、あまりのツイートの酷さに『これでは私が困ります』と申し上げたところ『それでは袂を分かちましょう』と言われ、全く平和裡に袂を分かったのが経緯です。他社からその文庫が出る直前に何で今更?」(原文まま)と反論した。

続けて「津原泰水さんの幻冬舎での1冊目。僕は出版をちゅうちょしましたが担当者の熱い想いに負けてOKを出しました。初版5000部、実売1000部も行きませんでした。2冊目が今回の本で僕や営業局の反対を押し切ってまたもや担当者が頑張りました。実売1800でしたが、担当者の心意気にかけて文庫化も決断しました」などと明かした。

このツイートに、作家高橋源一郎氏は「見城さん、出版社のトップとして、これはないよ。本が売れなかったら『あなたの本は売れないからうちでは扱わない』と当人にいえばいいだけ。それで文句をいう著者はいない。でも『個人情報』を晒して『この人の本は売れませんよ』と触れ回るなんて作家に最低限のリスペクトがあるとできないはずだが」と非難した。

作家の倉数茂氏は「信じられないこと 出版社の社長が自社で出した本の部数が少ないと作家を晒しあげる。ふつう編集者や営業は、一緒に作った本が売れなかった時『力が及びませんでした、残念です』というものだよ。もちろん同じことを作家は編集者たちに思っている。見城氏は作家ばかりでなく、自社の社員もバカにしている。商品としての本は、作家だけじゃない、編集者、デザイナー、営業、みんなで作るものじゃないか。もちろんこんな業界の基本のキを知らないわけがない。これじゃあ売り上げが悪いならでてけ、という単なる場所貸し会社じゃないか」と憤った。

ミステリー評論家の千街晶之氏は「たぶん社長にはもう言葉は通じないと思うが、幻冬舎から本を出している作家たちも怒りの声を上げている現状を、幻冬舎の他の人たちは認識してほしい。幻冬舎から出した本で推協賞をとったばかりの葉真中顕氏が、その恩義ある版元に怒りを表明せざるを得ない心境をあなたたちは受け止めるべきだ」と訴えた。

その後、見城徹氏は、自社から出版した作品の実売部数をツイッターで明かしたことについて謝罪し、当該ツイートを削除した。

見城氏は17日、ツイッターで「編集担当者がどれだけの情熱で会社を説得し、出版にこぎ着けているかということをわかっていただきたく実売部数をツイートしましたが、本来書くべきことではなかったと反省しています。そのツイートは削除いたしました。申し訳ありませんでした」と謝罪した。