歌舞伎俳優中村梅丸(22)が11月の東京・歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」で初代中村莟玉(かんぎょく)を名乗ることが決まり、師匠の中村梅玉(73)とともに23日、都内で記者懇親会を行った。

梅丸は梅玉の養子になることも発表された。

梅丸は「15年前、師匠の部屋を訪ねた時、まさかこんなことになるとは思っていませんでした。師匠よりお話をいただき、本当にうれしく思っています。幸せをかみしめながら一生懸命頑張りたいです」と話した。

梅玉は「やっと役者としてのスタートラインに立ったと思います。私もともに精進していきたい」。

梅丸は2~3歳の時に歌舞伎に出合った。7歳の時に梅玉の元に紹介され、2年後に正式に部屋子として修業を始めた。小さいころは「ウルトラマンか電車の運転士か歌舞伎役者になりたい」と言うほど歌舞伎が好きだったが、一般家庭出身ということもあり、「ウルトラマンと同じくらい、(歌舞伎役者は)なれないよと言われていた」(梅丸)という。

ここ数年、人気も実力もつけ、大きな女形の役を演じ注目されてきた。キュートな風貌もあって「まるちゃん」「まるる」などの愛称で呼ばれることも。梅玉も「私だけじゃなく、皆さんにかわいがってもらって、部屋子ではとても使ってもらえない役に使ってもらえている」と話す。

梅丸は、現在は女形中心に演じているが、梅玉が得意とする貴公子や殿さまなど、品のある立役にあこがれている。

披露演目「鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき) 菊畑」で演じる虎蔵実は源牛若丸も、梅玉得意の役。梅丸は「師匠が得意にしているお役にあこがれがあります。ただ、欲張りかもしれませんが、女形も勉強していきたいです」と意欲的だ。

「菊畑」では劇中での口上も検討しているという。

梅玉は「1人の若手俳優として精進を重ねて、周りが認めればいい役がついてくる。私の養子になることでプレッシャーに感じてはいけない」と話し、梅丸も「とらわれすぎては押しつぶされてしまうので、あまり考えないようにしたい」と自然体で挑むとした。

莟玉の名前は、梅玉の養父、6代目中村歌右衛門さんが若いころに行っていた公演「莟会」から取った。莟には「まだ開かない花の芽、前途有望だがまだ一人前になる前の若者」という意味がある。この字に梅玉の玉を加えた。

◆中村梅丸(なかむら・うめまる)1996年(平8)9月12日生まれ。本名・森正琢磨。05年1月国立劇場「御ひいき勧進帳」で本名で初舞台。06年4月に中村梅玉の部屋子となり、歌舞伎座「沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)」などで中村梅丸を名乗る。19年11月歌舞伎座で中村莟玉を名乗る。