「北酒場」「石狩挽歌(ばんか)」などの作詞家で、直木賞作家のなかにし礼(なかにし・れい)さん(本名中西礼三=なかにし・れいぞう)が23日午前4時24分、心筋梗塞のため都内の病院で死去した。82歳だった

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なかにし礼さんとは90年代半ばに、テレビ朝日系の情報番組「ワイド! スクランブル」で、一緒にコメンテーターを務めたことがあった。控室で新聞用語の話になったことがあった。

なかにしさんに「新聞は作詩家ではなく、作詞家と書きますよね。いつからですか」と問われたことがあった。明確な時期は答えられなかったが「歌の場合は詞で、ポエムの場合は詩と使い分けています」と説明した。会話はそれで終わったが、その後、なかにしさんが詩と詞にとてもこだわっていることを知った。

なかにしさんはインタビューで「詩は限りなく音楽に近いけど、音楽なしでもひとり歩きできるもの。詞は限りなく言葉に近い音楽」と話しているのを知った。自分の答えがなんと稚拙だったか恥じた。

そして歌詞に何を求めるかに関しては「自己表現です。作品は作者に一番似ている。作品そのものが作者の肖像画であり、似顔絵なんです」。日本屈指の表現者の隣に、コメンテーター然として座っていた自分自身を恥ずかしく思う。【音楽担当・笹森文彦】