漫画家・吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏原作の人気漫画「鬼滅の刃」をアニメ映画化し、10月16日に封切られた「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」(外崎春雄監督)が27日、公開から73日間、11週目で興行収入(興収)324億7889万5850円、動員2404万9907人(全国379館)を記録した。製作、配給のアニプレックスが28日、発表した。01年の宮崎駿監督のスタジオジブリ作品「千と千尋の神隠し」が記録した316億8000万円を超え、日本映画の歴代興収記録を更新した。

「鬼滅の刃」が、日本映画史において、破られることはないとみられていた「千と千尋の神隠し」の記録を超え、新たな金字塔を打ち立てた。「千と千尋の神隠し」配給の東宝が15日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、6月から8月まで行った企画「一生に一度は、映画館でジブリを。」で上げた8億8000万円を上乗せし、興収記録を316億8000万円に差し替えたが、その記録をあっさり超えた。

26日から、全国82館の劇場でMX4D、4DXでの上映を始め、同上映を見た全国合計30万人に入場者特典として「無限列車切符風アクリルキーホルダー」を配布した。さらに同日から、通常上映でも第4弾の入場者プレゼントとして全国合計75万人に「キャラクターデザイン:松島晃描き下ろしメモリアルボード」を配布。絵柄は、炎の呼吸を使う煉獄(れんごく)杏寿郎が見返る姿と、涙する主人公竈門炭治郎(かまど・たんじろう、声=花江夏樹)、我妻善逸(あがつま・ぜんいつ、同=下野紘)、嘴平伊之助(はしびら・いのすけ、同=松岡禎丞)が描かれている。MX4D、4DXでの上映は、発売とほぼ同時にチケットが全国的に、ほぼ完売。全国の映画館で新グッズを求めるファンが列を作った。

「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」は、これまで

◆1週目(10月16~18日)興収46億2311万7450円、動員342万493人。

◆2週目(~25日)興収107億5423万2550円、動員798万3442人。公開10日目で「千と千尋の神隠し」が持っていた、興収100億円突破最速記録の25日を19年ぶりに15日間も更新し史上最速。

◆3週目(~11月1日)興収157億9936万5450円、動員1189万1254人を記録。歴代興収ランキングで、同156億円の「アバター」(09年)を抜き、10位に浮上。

◆4週目(~8日)興収204億8361万1650円、動員1537万3943任。同203億円の「ハリー・ポッターと賢者の石」(01年)を超えて日本歴代5位に浮上。また、10月16日の初日から24日での興収200億円突破は史上最速。

◆5週目(~15日)興収233億4929万1050円、動員1750万5285人を記録。

◆6週目(~23日)興収259億1704万3800円、動員1939万7589人を記録し「アナと雪の女王」、「君の名は。」を超えて歴代3位に浮上。公開から39日での興収250億円突破も史上最速。

◆7週目(~29日)興収275億1243万8050円、動員2053万2177人を記録し、同262億円を記録した97年の米映画「タイタニック」を超え、日本歴代興収2位。

◆8週目(~12月6日)52日間で興収288億4887万5300円、動員2152万5216人を記録。「千と千尋の神隠し」の歴代最高興収308億円に、あと20億円。

◆9週目(~13日)59日間で興収302億8930万7700円、動員2253万9385人を記録。59日間での興収300億円突破は、「千と千尋の神隠し」の公開253日目と比較して5倍近く速い史上最速。

◆10週目(~20日)興収311億6664万7900円、動員2317万5884人(全国389館)を記録。

と日本映画史に残る興収、動員記録を打ち立て続けている。

「鬼滅の刃」は、2016年2月15日発売の「週刊少年ジャンプ」で連載がスタートし、5月18日発売の同誌まで4年3カ月の間、休載なしで205話、掲載された。大正時代を舞台に、主人公竈門炭治郎(かまど・たんじろう、声=花江夏樹)が家族を殺した鬼と戦うために修業して「鬼殺隊」に入隊し、鬼と化した妹禰豆子(ねずこ、声=鬼頭明里)を人間に戻す方法を探して戦っていく物語。19年4月から9月までアニメが放送され、人気が爆発的に高まった。

今回の劇場版では40人以上の行方不明者を出しているという無限列車を舞台に、炭治郎たちと史上最強の敵・魘夢との激闘が描かれた。テレビシリーズにも出ていた鬼殺隊の最高位“柱”の1人で、炎の呼吸を使う炎柱・煉獄杏寿郎が、任務に挑む姿が初めて描かれ、後輩の炭治郎らに激励の言葉を投げかけるなど、おとこ気のある姿勢に共感の声が相次いでいる。映像美も評判で、終盤に煉獄が上弦の参の鬼・猗窩座と激闘を演じるシーンをはじめ、アニメを超え、実写の質感があると評価が高い。

4日には、原作の最終23巻が発売された。初版発行部数は異例の395万部ながら、全国で朝から書店に行列が出来るなど社会現象を巻き起こした。506円(税込み)の通常版に加え、竈門炭治郎、禰豆子、我妻善逸、嘴平伊之助のフィギュア4体が同梱された5720円(税込み)の特装版を、予約受注以外に店頭で販売する店もあり、争奪戦も展開された。

歴代最高興収の新記録を達成したこの日、日刊スポーツ映画大賞で、最高賞の石原裕次郎賞を受賞した。配給のアニプレックス、吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)氏の原作を連載した「週刊少年ジャンプ」出版元の集英社と製作したufotable(ユーフォーテーブル)は「見てくださった皆様、お力添えくださる皆様のおかげで年内、年明けと上映が続けられることとなりました。そのことはスタジオにいるスタッフのエネルギーとなっています。さらに栄誉ある石原裕次郎賞もちょうだいし、そのエネルギーはより大きなものになると思います。これからも変わらず、作品ならびにスタジオ、スタッフを応援頂ければうれしく思います。ありがとうございました」とコメントを寄せている。