2日に東京・歌舞伎座で「寿 初春大歌舞伎」が、3日は新橋演舞場「初春海老蔵歌舞伎」、国立劇場「初春歌舞伎公演」の幕が開いた。

歌舞伎座では昨年8~12月は4部制で各部1演目だったが、今月からは3部制になり各部2演目になった。第1部「壽浅草柱建(ことほぎてはながたつどうはしらだて)」は、本来、浅草歌舞伎に出演するはずだった尾上松也ら若手メンバーが集結した。今年は恒例の正月の浅草歌舞伎が中止になってしまったのだ。初春にぴったりの、おめでたい華やかな舞踊劇で、「いまだ流行り病は終息せず…(中略)世界平らかなるを皆々で祈念いたそうぞ」というせりふで締められた。

昨年11月に亡くなった坂田藤十郎さん(享年88)をしのぶ「夕霧名残の正月」も。遊女夕霧が登場する夕霧狂言の源流となった同作を、藤十郎さんは05年の自身の襲名興行で復活させた。藤十郎さんは夕霧の恋人・伊左衛門をつとめ、亡き恋人の幻影と踊る切なく美しい舞台を作り上げた。

尾上菊五郎らによる国立劇場の「通し狂言 四天王御江戸鏑(してんのうおえどのかぶらや)」の取材会では、出演者が異口同音に「嫌なことを忘れてもらいたい」と話していたのが印象的だった。

昨年の大きな出来事を色濃く残す正月公演だが、どの公演にもどの演目にも、希望や願いが込められている。