先月30日、映画「名も無き世界のエンドロール」(佐藤祐市監督)の公開記念舞台あいさつを取材した。

同作品は、行成薫氏原作のサスペンス。主演の岩田剛典(31)演じるキダと、新田真剣佑(24)演じる幼なじみのマコトが、20歳の時のある事件をきっかけに人生が大きく変わってしまう。キダは裏社会で、マコトは会社経営者として表社会と、それぞれの立場から不条理な世の中に復讐(ふくしゅう)するため、あるたくらみを仕掛けるという物語だ。

公開から1日たったこの日、佐藤監督は「こういう状況下で無事に公開できたことが本当にうれしいです」と喜びをかみしめた。

そして、同日公開だったライバル映画、「ヤクザと家族 The Family」(藤井道人監督)と「花束みたいな恋をした」(土井裕泰監督)の話を始めた。

佐藤監督は公開日に、映画「花束みたいな恋をした」を見たといい「とてもよくできていて、さすが、坂元(裕二)さんの脚本で土井監督が撮ったんだと感心した」とこの場でまさかのライバル映画を称賛した。

続けて「期せずして、この映画もそうですけど、3作品ともどこか“絆”というか、人との関わりみたいなものをすごく大事にしている」と話し、「うちは“幼なじみ”で、ヤクザの方は“家族”で、花束の方はピュアな“恋愛”を丁寧に描いていて。それぞれこういうなかなか人と顔を合わせて話せない時代に、期せずしてそういうさまざまな絆を描いた映画3本が、29日に同時公開になったというのはちょっとなんか感慨深いものがある」としみじみ語った。

こんな時代だからこそ「エンターテインメントがどこかこういう世の中のちょっと支えというか、ちょっと息抜きとかを提供できるように、みんなで頑張っていきたい」と力を込めて話した。

主演を務めた岩田も「『ヤクザと家族The Family』『花束みたいな恋をした』、そして『名も無き世界のエンドロール』、この3つを、ぜひともセットでご覧いただきたいと思います」と3作そろってアピール。「こういう時代だからこそ、映画がもっともっと活気づいてほしいし、映画館に人が入ってほしい」と切に願いを込めていた。

本来なら同日公開のライバル作品だが、映画界全体を盛り上げるためにも“力を合わせたい”。そんな強い思いがひしひしと伝わってきた。