日曜放送のTBS系「天国と地獄~サイコな2人~」がいよいよ大詰めに入っている。

さりげなく、そして分かりやすく別人格を演じ分ける綾瀬はるか(35)には毎回感服している。女性刑事(綾瀬)と、裏の顔を持った実業家(高橋一生)の人格がひょんなきっかけで入れ替わってしまうというむちゃな設定をしれっと演じてしまえるのは、彼女ならではだと思う。

19日公開の映画「劇場版 奥様は、取り扱い注意」の役柄は「元特殊工作員の専業主婦」。こちらもむちゃぶりとも言える設定を当たり前のように演じ、おまけに切れのいいアクションも披露している。

主演映画「万能鑑定士Q モナ・リザの瞳」の特別試写会で、パリに同行取材したのは6年前のことだ。現地の人たちとの交流パーティーで見せた変化に富んだ表情に、そんな彼女の柔軟性が端的に表れていた気がする。

現地では感情表現の振幅が、私たちのそれより格段に大きい人も多かった。会が進行するに従い、綾瀬の喜怒哀楽のメリハリもそれに呼応するように効いてきた。驚き、笑い、あぜんとする…その「顔」の変化に思わず何度もカメラのシャッターを切った。

翌日、ルーブル美術館で「モナリザ」の前に立った時には、一転、それらしい「神妙な顔」になった。「絵になる女優」とはこのことだと思った。

目に見えない研鑽というのはもちろんあるのだろうが、天然キャラに隠された技巧派とも言える多彩な演技やアクションを見るにつけ、その懐の深さを思わずにはいられない。【相原斎】