シンガー・ソングライターで俳優の泉谷しげる(72)が14日、自ら発起人となり15年から開催してきた「阿蘇ロックフェスティバル」を、5回目となる今回をもって勇退することを明らかにした。

昨年はコロナ禍で中止されたが今年は「新阿蘇大橋開通記念」として10月23、24日に熊本県野外劇場アスペクタで開催する予定だ。

「阿蘇ロックフェスティバル」は、14年に阿蘇山中岳で起きた大規模噴火で、阿蘇を訪れる観光客が減少しその後も風評被害によって観光客が戻ってこない状況を憂慮した泉谷が「エンターテインメントで地域活性」を合言葉に熊本・南阿蘇村で開催してきた。

しかし、その翌年、同県で大地震が発生したことから、その後は熊本地震被災地を支援するフェスとして泉谷が発起人となって盛り上げてきた。

中でも19年は「噴火、大地震と大きな災害に見舞われた熊本、阿蘇の出来事は日本中で考えなければならないこと。誰もがその1日も早い復興を望んでいる」(泉谷)と、会場を北九州市小倉のミクニワールドスタジアムに移して全国に向け「阿蘇ロックフェスティバル2019 in北九州」として支援を訴えた。

しかし、昨年はコロナ禍で社会が揺れる中で中止を余儀なくされただけに、泉谷も「今年こそはいう思いが強い」という。

「熊本市から阿蘇方面への大動脈ともいうべき57号線も昨秋、復旧し、さらに今年3月には熊本地震で崩落した阿蘇大橋が『新阿蘇大橋』となって開通した。オイラが念願として掲げてきた阿蘇地域全体のインフラも整い、いよいよ阿蘇の観光業復興に弾みが出てきた。そこで、今年は熊本地震からの復興を大いに祝したロックフェスにしたい。あとはコロナの感染拡大が収まればいいだけ」。

今年のフェスは10月23、24日に熊本・南阿蘇村の熊本県野外劇場アスペクタで開催されることなった。さらに、その上で今年の開催で泉谷は発起人という立場を勇退することを明らかにした。

「地元の有志の“志”もあって、ここまで輪を広げることが出来たし、これでオイラの役目も果たしたと思っている。本当は、去年を最後にするハズだったが、コロナのせいで中止となり、コロナ都合であいまいな決着にしたくなかったのさ。コロナのせいで、勇退するのはシャクだからな! 今年で5回目となり、あの新阿蘇大橋もやっと開通して、1つの区切りで、オイラは若いアーティスト、次の世代のアーティストに、阿蘇ロックを受け継ぎたい。ま、オイラの既得権じゃないし、持ち物でもないんだから。また個人的な理由だが、72歳オレの足で、あの山の中、あの急勾配のステージ立地は、体力的に正直、つらい! とにかく、若い連中に、これからも阿蘇ロックを受け継いでいってほしい」

泉谷にとっては、あくまでも自分の役割は果たし終えたということのようだ。これまでも91年の長崎・普賢岳の大噴火や93年の北海道南西沖地震の大津波をはじめ、95年の阪神・淡路大震災、さらには東日本大震災など災害が起こるたびに被災地への支援を積極的に行い「日本を救え!」と叫び続けてきた。

このような活動を続ける泉谷には、さだまさしや松山千春、小林幸子、大竹しのぶ、ももいろクローバーZなど多くのアーティストや仲間が賛同してきた。

なお、今年の「阿蘇ロックフェスティバル2021」の出演者など詳細は今後、随時発表される予定。