世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(7月6日開幕)のラインアップが3日、同映画祭事務局から発表され、濱口竜介監督(42)の新作「ドライブ・マイ・カー」(8月20日公開)が、最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に出品された。村上春樹氏(72)の短編小説の映画化作品で、監督作の同部門への出品は、商業映画デビュー作の18年「寝ても覚めても」以来2度目となる。

濱口監督は、自ら映画化を熱望し脚本も手掛けた作品のコンペ部門出品が決まり「歴史あるこの映画祭で、多くの観客がこの映画と初めて出会うことを想像して湧き上がるような興奮を感じています」と喜んだ。その上で「全てのキャスト・スタッフ、原作者の村上春樹さんにこの場を借りて心からの御礼を申し上げます」と村上氏に感謝した。

近年、濱口監督は3大映画祭を中心に世界各国の映画祭で高く評価されている。昨年のベネチア映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した「スパイの妻」では、野原位氏と企画と脚本を担当し、東京芸術大大学院映像研究科の師の黒沢清監督に企画を持ち掛けた。2月のベルリン映画祭では「ドライブ-」と並行して撮影した短編3話のオムニバス映画「偶然と想像」で、審査員大賞(銀熊賞)を受賞。日本映画の次代を担う才能として注目される。

主演の西島秀俊は出演作が初めてカンヌ映画祭のコンペティション部門に出品され「監督が人間について深く思考し愛情を注いだ作品のコンペ部門選出を心からうれしく思う」と感激した。

◆「ドライブ・マイ・カー」 村上春樹氏が「女のいない男たち」と題した連作の第1弾として「文芸春秋」13年12月号に発表した短編。舞台俳優で演出家の家福(かふく)悠介(西島)は、満ち足りた日々を送る中、脚本家の妻音(霧島れいか)が秘密を残したまま急逝してしまう。2年後、演劇祭で演出を任された家福は、愛車で向かった広島で、寡黙な専属ドライバー渡利みさき(三浦透子)と出会い、過ごす中、それまで目を背けていたことに気づかされていく。