フランスで開催中のカンヌ映画祭で最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に出品された、濱口竜介監督(42)の新作長編映画「ドライブ・マイ・カー」(8月20日公開)の公式上映が11日、行われ、同監督と三浦透子(24)霧島れいか(48)台湾の女優ソニア・ユアン(30)が参加した。濱口監督はグラン・リュミエールでの公式上映後、同日夜(日本時間12日)囲み取材に応じ、映画の原作となった短編小説を書いた作家・村上春樹氏(72)の存在が、作品の注目度にもつながっていると語った。
「ドライブ・マイ・カー」は、村上氏が13年11月発売の「文芸春秋」12月号に発表した短編で、同誌14年3月号まで連続で掲載した「女のいない男たち」と題した連作の第1弾で、14年の短編小説集「女のいない男たち」(文春文庫刊)に収められた短編小説の映画化作品。濱口監督は「今回、カンヌに来て、幾つか取材をしていただいて、やっぱり皮切りの質問としていただくのは『どうして村上春樹さんの小説を?』ということを皆さんおっしゃる。そもそも、村上さんに寄せられている関心があって、この映画にも注目していただけているということは、すごく感じました。そういうものに、何というか…乗っかっているところはあると思っています」と、村上氏への世界各国メディアの関心度の高さを口にした。
一方で「基本的には短編の内容だけでは、長編映画にはならないということで、何がしか膨らませる必要があると思っていました」とも口にした。「ドライブ・マイ・カー」は、同名の短編に加え「女のいない男たち」に収録された6編の短編の中から「シェエラザード」「木野」のエピソードも投影し、脚本を作り上げた。
濱口監督は「やっぱり、とてもファン、興味関心を持っている方も多いものなので、好き勝手にやっていいものではないとは思っていた。出来る限り、村上さんの精神に則ってやれるように、ということは、すごく考えました」と、映画化に当たっての考え方を説明。その上で「ただ、それは書かれてある通りのことを映像で再現するということとは違うと思っていたので、本当に何度も読んで、自分にとって、これは映画になるなと思う要素を組み合わせていくことをしていた。短編小説に1つの問い掛けみたいなものがあるとして、原作者の精神に則って、どうやって長編映画にしていくか、ということを、すごく考えております」と、村上氏の精神を汲み取りつつ、映画として表現したことを強調した。
コンペティション部門には、ポール・バーホーベン監督(オランダ)の「Benedetta」、俳優としても知られるショーン・ペン(米国)の「Flag Day」、ウェス・アンダーソン監督(同)の「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」、フランソワ・オゾン監督(フランス)の「Touts'est bien passe」、ナンニ・モレッティ(イタリア)の「Tre piani」など、世界的に評価の高い監督の作品が名を連ねる。濱口監督は「自分が本当に10、20代の頃から知っているような監督の名前がコンペに並んでいて、すごく単純に興奮することですよね。そんなことが自分の人生に、あるんだというのが、すごくあります。(他の監督と)会ったりはしていません…会えたら良いなと思います」と笑みを浮かべた。
受賞の可能性、自信を問われると「これは…本当に分からない。作った作品には、とても誇りを持っているので、それが評価されたらうれしいとは、もちろん思っております」と淡々と語った。一方で「拍手の熱量みたいなものも、すごく感じたので。本当にいいと思って拍手をしてくださっているという印象が、少なくとも自分の周りからは感じられた」と公式上映で得た手応えも口にした。



